- はじめに
- 第1章 「教師のいらない授業」づくりの考え方
- 1 教師のいらない授業とは?
- 2 教師が頑張りすぎる授業
- 3 教師のいらない授業の要件@ 互いに支え合う学級集団
- 4 教師のいらない授業の要件A 「うまくいかない」を大切にするマインド
- 5 教師のいらない授業の要件B 「個」が確立されている学習
- 6 教師のいらない授業の要件C 高い対話力
- 7 教師のいらない授業へのステップ@ 学習を自分事にする
- 8 教師のいらない授業へのステップA 子ども同士のつながりをつくる
- 9 教師のいらない授業へのステップB 教師が消える
- 第2章 「教師のいらない授業」のつくり方
- ステップ1
- [学級経営] あらゆることを「自分事」にする
- [学習課題] 「問い」を意識できるようにする
- [話し合い] 「言えない」から「言い合い」へシフトする
- [ペア・グループ学習] 思いを相手に伝えられる場を増やす
- [ファシリテート] 子どもたち全員の意見表明の場をつくる
- [ふり返り] 「感想」から「ふり返り」へシフトする
- [ICT活用] ICTで一人ひとりの考えを見える化する
- ステップ2
- [学級経営] 「うまくいかない」場を大事にする
- [学習課題] 「問い」を活かした課題を教師がつくる
- [話し合い] 「言い合い」から「話し合い」へシフトする
- [ペア・グループ学習] 自然と学び合いが始まるグループを構成する
- [ファシリテート] 表明した意見を先生がつなげる
- [ふり返り] 内容だけでなく「学び方」もふり返る
- [ICT活用] ICTで考えの整理を助ける
- ステップ3
- [学級経営] 子どもたちの試行錯誤する姿を支える
- [学習課題] 「問い」を活かした課題を子どもたち自身でつくる
- [話し合い] 「話し合い」から「聴き合い」へシフトする
- [ペア・グループ学習] 子どもたちだけで学び合うスキルを高めていく
- [ファシリテート] 表明した意見を子どもたち自身でつなげる
- [ふり返り] ふり返りの視点を絞る
- [ICT活用] ICTを子ども自身で選択しながら活用する
- 第3章 「教師のいらない授業」実況中継!
- 実況中継1 国語 「ごんぎつね」(4年)
- 実況中継2 道徳 「手品師」(6年)
- 実況中継3 社会 「世界の未来と日本の役割」(6年)
- 第4章 「教師のいらない授業」に取り組むために
- セクション1 子どもたちにきいてみよう
- Q1 ハテナを大切にして、深く学べるようになったのはどうして?
- Q2 ペアやグループで、自分たちで話し合って学べるようになったのはどうして?
- Q3 自分(たち)で学ぶ目的を持てるようになったのはどうして?
- Q4 お互いの考えを聴きながら深く学べるようになったのはどうして?
- Q5 ふり返りを大切にして、自分の成長につなげられるようになったのはどうして?
- Q6 タブレットPCを活用して深く学べるようになったのはどうして?
- Q7 どんな先生だとうれしい?(全員に聞いてみました)
- セクション2 実践に取り組むためのQ&A
- Q1 どのように教材研究をすればよいですか?
- Q2 まず何から始めればよいですか?
- Q3 保護者は不安に感じませんか?
- Q4 時間内に終わりますか?
- Q5 きちんと学力は定着しますか?
- Q6 学力的にしんどい子にはどう支援しますか?
- Q7 先生の思っていた方向性と子どもたちの動きが大きくズレた時はどうしますか?
- 参考文献
- おわりに
はじめに
はじめまして。京都教育大学附属桃山小学校で先生をしている若松俊介と申します。今回、「教師のいらない授業」について、自分が考えていることを書かせていただくことになりました。とても貴重な機会をいただき、有り難く思っています。
きっとこの本をお読みになる方は、子どもに関わる仕事や生活を送っておられる方が多いと思います。
・もっと子どもたちの成長に関われるようになりたい
・どうすれば、子どもたちがいきいきと学習することができるのだろう
・より良い教育の在り方について考えたい
…と、目の前の子どもたちの成長を心から願い、日々試行錯誤しておられることでしょう。
私も同じです。「子どもたちの成長のために、私ができることは何だろうか」と、日々試行錯誤しています。その中で、現在の私が追究しているテーマは、
「どうすれば、子どもたち一人ひとりが生きる授業ができるのだろう」
といったものです。約十年間、ずっと考え続けている究極の「問い」です。自分の生活経験、所属している研究会や学校で他の先生方から学んだこと、目の前の子どもたちの姿などをきっかけにして、こうしたことが気になるようになりました。
追究し始めて二年目、大阪府の公立小学校で二年生の担任を受け持っていた時の授業のことは今でも忘れられません。国語で説明文「たんぽぽのちえ」(植村利夫著、光村図書二年上)の学習をしていた際に、ある子がいきなり、
「どの段落にも『たんぽぽのちえ』に関係することが書かれているのに、第一段落だけ『ちえ』が書かれていないのはどうしてなんだろう」
と自分が気になっていることを話し始めました。予想外の意見だったので、私も、あまり考えられず、
「本当だなぁ、どういうことなんだろう」
と返すと、そこから子どもたちがどんどん自分たちの考えを出していきました。
私のことなど本当に気にせず、互いに考えを聴き合いながら第一段落の秘密を探ろうとしていました。お互いの「問い」が響き合いながら、「段落同士の関係」について考えたり、「各段落の役割」ついて整理したりしていました。子どもたち一人ひとりが本当に生き生きした顔つきで学び合っていたことを今でも鮮明に覚えています。
この授業をきっかけに、私は子どもたちのすごさに改めて気づかされました。これまでは、「私がコーディネートしないと深く学ぶことなんて難しいだろう」と考え、授業中に私がどのように立ち回るかばかりを考えていました。しかし、子どもたちだけの力で十分本質に迫っていけることに驚かされました。
「子どもたちはすごい」というのは当たり前のことなのですが、そのことを本当に実感できたおかげで、「子どもたち一人ひとりが中心となる授業づくりについて考えよう」と、これまで以上に思えるようになりました。子どもたち一人ひとりの感性や好奇心を大切にした上で、「個」の学びを受け止めて促進する授業づくりについて、現在もなお模索し続けています。
世の中では、「今から何十年後の仕事は…」「AIに負けない…」とよく言われます。そのために教育も変化しなければならないのは間違いありません。ただ、そのためではなく、本当に子どもたちが持っているものを大事にした教育を考えていくことが、結果的に将来にもつながるというものでありたいなと思います。
子どもたちの成長を支える手立てに、「絶対これでうまくいく…」「失敗しない…」というものはありません。本書にはそういったことは書かれていません。現在、私が子どもたちと共に大切にしていることを書いています。中には、「いや、これは…」「ここはこうした方が…」というのもあるでしょう。そういった思いも大切にしながら読み進めていただければと思います。
そして、本当に子どもたちのために大切なことを、読者の皆様と共に見つけていければ有り難いなと思います。どうぞよろしくお願い致します。
二〇二〇年五月 /若松 俊介
教師の指示を待って、ただそれをこなすだけの学習に違和感を感じてたので、とても参考になりました。
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