- はじめに
- 序章 「教師のいらない学級」づくりのために
- 1 「教師のいらない学級」とは?
- 2 なぜ「教師のいらない学級」を目指すのか
- 3 「いい学級」とはどんな学級?
- 4 「教師のいらない学級」を目指す3ステップ
- 5 3ステップを支える教師の在り方@ コーチングを活用する
- 6 3ステップを支える教師の在り方A 授業とつなげる
- 7 3ステップを支える教師の在り方B 教師自身がふり返る
- 「教師のいらない学級」へのロードマップ
- ステップ1 あらゆることを「自分事」にする
- 前半 自分で考える土台をつくる
- 1 まずは子どもたちの現在地をつかむ
- 2 自分で考えるクセがつくようにする
- 3 学級で「できること」を一緒に考える
- 4 学級で「大事にしたいこと」を一緒に考える
- 5 子どもたちがつながる場をつくる
- 6 保護者に学級のビジョンを伝える
- 後半 チャレンジする姿を支える
- 7 チャレンジできる場を多く用意する
- 8 係活動で学級の楽しさをつくれるようにする
- 9 子どもたちの些細な成長を見つける
- 10 「こうすればうまくいくかも」を大切にできるようにする
- 11 子どもたち同士のつながりを把握する
- 12 ふり返りの良さを伝える
- ステップ1までのQ&A
- 「子どもたちの現在地をつかむ」ってどうするの?
- 学級目標はつくるべき?
- 自分で考えるのが得意でない子には?
- 反抗的な態度をとる子には?
- 文章を書くことが得意でない子には?
- ステップ2 「うまくいかない」を乗り越える
- 前半 試行錯誤の土台をつくる
- 1 子どもたちの「うまくいかない」を受け止める
- 2 「うまくいかない」ことを楽しむ心を育てる
- 3 「うまくいかない」について一緒に考える(個人課題)
- 4 「うまくいかない」について一緒に考える(集団課題)
- 5 ふり返りをレベルアップできるようにする
- 6 保護者に現在の子どもたちのことを相談する
- 後半 乗り越える姿を支える
- 7 子どもたちの試行錯誤を受け止める
- 8 対話しながら解決する力を育てる
- 9 係活動をレベルアップできるようにする
- 10 子どもたちのグループ同士がつながるようにする
- 11 まだチャレンジできない子の思いを受け止める
- 12 あらゆるイベントを成長のチャンスに変える
- ステップ2までのQ&A
- 子どもたちのケンカに対してどう指導する?
- 「周りの学級と合わせるように」と言われたら?
- 子どもたちに任せる学級会で時間がかかり過ぎないためには?
- 「価値付ける」際に大切なことは?
- 「叱る」ことはダメなことなのか?
- ステップ3 子どもたち自身で成長する
- 前半 教師の役割をぐっと減らす
- 1 様々な分野のリーダーに頼る
- 2 互いにコーチングし合える関係性をつくる
- 3 子どもたちができること、できないことを正確に捉える
- 4 子どもたちでできていることが増えていることを価値付ける
- 5 当たり前のようにふり返る姿を支える
- 後半 次の学年へとつなぐ
- 6 お互いの良さを可視化する
- 7 保護者と子どもたちの成長を共有する
- 8 他学級の仲間とつなぐ
- 9 自分の成長を自分で実感できるようにする
- 10 自分たちの成長の仕方を捉えられるようにする
- ステップ3までのQ&A
- 「教師のいらない学級」は低学年でも実現できる?
- 高学年女子への対応で大切なことは?
- どうすれば心に余裕を持つことができる?
- ICTは学級づくりでも活用している?
- 「学級じまいには教師の色を抜くこと」は本当に大切?
- 参考文献
- おわりに
はじめに
はじめまして。京都教育大学附属桃山小学校で先生をしている若松俊介と申します。今回、「教師のいらない学級」について、私が考えていることを書かせていただくことになりました。前著『教師のいらない授業のつくり方』と同様、とても貴重な機会をいただき、有り難く思っています。
きっとこの本をお読みになる方は、子どもに関わる仕事や生活を送っておられる方が多いと思います。
・もっと子どもたちの成長に関われるようになりたい
・どうすれば、子どもたちがいきいきと過ごすことができるのだろう
・「教師」という仕事の役割は何なのか
・より良い教育の在り方について考えたい
…と、目の前の子どもたちの成長を心から願い、日々試行錯誤しておられることでしょう。
私も同じです。「子どもたちの成長のために、私ができることは何だろうか」と、日々試行錯誤しています。その中で、現在の私が大事にしている「問い」は、
どうすれば、学級を子どもたち一人ひとりが生きる場にすることができるのだろう
といったものです。これまでの生活経験、所属している研究会や学校で他の先生方から学んだこと、目の前の子どもたちの姿などをきっかけにして、こうした「問い」を持つようになりました。
この「問い」の中心となる「子どもが生きる」に注目するようになったのは、大学三回生で行われた教育実習からです。教育実習では、授業を考えたり、子どもたちと一緒に遊んだりするだけでなく、「特定の子の毎日を徹底的に追う」ということを行いました。授業中の言葉やつぶやき、行動等を全て記録したり、休み時間も一緒に過ごしたりしながら、その子の姿をひたすら追ったのです。
こうしたことを積み重ねていくことで、その子の「生きる」姿が少しずつ見られるようになりました。
・授業中であろうが、興味のあることが身のまわりで発生すればそちらに没頭する
・「あれ?」「僕は違うなぁ」「どういうこと?」「おもろっ」と自然な感情をつぶやく
・ケンカしてなかなか自分の思いが伝わらなくても、何とか最後まで自分なりの言葉で伝えようとする。本当に伝わった時に少し微笑む
…と、細かく観察することで、一つ一つの行動に、その子の思いや願いがあることを感じ取ることができました。そこからは、子どもたち一人ひとりが「どのように世界を観ているのか」「どのように生きているのか」ということが私の中での関心事となりました。
昨年、私は『教師のいらない授業のつくり方』(明治図書)という本を書かせていただきました。そこには、授業のことだけでなく、学級づくりのことについても書きました。なぜなら、子どもたちが生きる場は全てつながっており、授業だけを独立させて考えることはできないからです。
読者の方から、「子どもたちへの任せ方が分かった」「『子ども主体』のイメージが湧いた」といった声と共に、「実際に取り組んでみようと思ったけどなかなか難しい」という声もいただきました。「教師のいらない授業」の実現は簡単なことではありません。私自身、子どもたちと共に毎日、試行錯誤しています。
今回、学級づくりに焦点を当てることによって、私自身「子どもが生きる」についてさらに考えることができました。こうした考えが教師としての在り方を豊かにすると共に、授業づくりの土台となります。本書で学級づくりについて整理したことが、前著を読んで「なかなか難しい」と感じられた方を救うものになればいいなと思います。
子どもたちの成長を支える手立てに、「絶対これでうまくいく…」「失敗しない…」というものはありません。本書にこうしたことは書かれていません。現在、私が子どもたちと共に大切にしていることを書いています。中には、「いや、これは…」「ここはこうした方が…」というのもあるでしょう。そういった思いも大切にしながらお読みください。
そして、本当に子どもたちのために大切なことを、読者の皆様と共に見つけていくことができれば嬉しいです。どうぞよろしくお願い致します。
二〇二一年五月 /若松 俊介
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