- まえがき
- 第1章 苦手さのある子への指導基本的な視点
- 視点@ 徹底した子どもの実態把握に努める
- 視点A 遊びの要素で大脳の動きを活性化させる
- 視点B 指導体制を整えて計画的に進める
- 第2章 苦手さのある子への指導までの手続き
- @ 実態把握と指導計画の立案
- 1 初段階の手続き
- 2 実態把握
- 3 指導計画立案
- A 校内教育支援委員会
- B 家庭支援会議
- 第3章 【タイプ別】苦手さのある子への指導レシピ
- @ ひらがなを書くことに課題のある子への指導
- 子どもの様子
- 実態把握と指導方法
- 形状把握・視覚処理に課題のあるタイプ
- 文字を部分的に捉えてしまう課題のあるタイプ
- 目と手の協応に課題のあるタイプ
- 指導の実際
- 指導例1 小学校1年 男児
- 指導例2 小学校2年 女児
- 指導例3 小学校4年 男児
- 指導のポイント
- A 時間を守れない子への指導
- 子どもの様子
- 実態把握と指導方法
- 時間を根本的なことから学ぶ必要のあるタイプ
- 生活のリズムが乱れているタイプ
- 家族の中の人間関係に課題があるタイプ
- 指導の実際
- 指導例1 小学校1年 男児
- 指導例2 小学校2年 女児
- 指導例3 小学校3年 男児
- 指導のポイント
- B 片付けが苦手な子への指導
- 子どもの様子
- 実態把握と指導方法
- 自分が何をどこにどのように置くのかがわからないタイプ
- 極端に体を動かすことをしないというタイプ
- 指導の実際
- 指導例1 小学校1年 女児
- 指導例2 小学校1年 男児
- 指導例3 小学校4年 男児
- 指導のポイント
- C 友達の中に入れない子への指導
- 子どもの様子
- 実態把握と指導方法
- 集団の中には全く入れないタイプ
- 特定のグループには支援を受けながら参加できるタイプ
- 集団の中に参加できることがあるができないこともあるタイプ
- クラス内のグループ学習は誰とでも一緒に活動できるタイプ
- 支援なく多くの子どもや教師と楽しむことができるタイプ
- 指導の実際
- 指導例1 小学校2年 男児
- 指導例2 小学校1年 男児
- 指導例3 小学校4年 男児
- 指導のポイント
まえがき
本書で紹介する実践は,最初から指導方法や指導内容などが見つかり,とんとんと指導が進められたわけではありません。むしろ,指導の糸口を見つけたり指導方法を組み立てるのに時間がかかったり,指導計画に疑問を感じたり,指導の効果が実感できなかったりなど暗中模索の中,多くの仲間とたくさんの時間をかけて話し合って,実践しては修正し実践する。その連続で,試行錯誤を繰り返した実践を整理したものです。決して,ベストな指導方法だと思っているわけではありませんし,これからもこれらの実践の指導方法や指導計画などはさらに進化させていきたいものです。
指導実践の根幹となる次の3点の指導の視点をしっかりと説明しておく必要があります。学校で指導体制を整えて実践していく時に,この3つの視点を共通理解しておかないと指導に効果が得られません。指導者には,毎時間,この3視点を念頭に置きながら実践していただきたいと思っています。
視点1:徹底した子どもの実態把握に努める
視点2:遊びの要素で大脳の動きを活性化させる
視点3:指導体制を整えて計画的に進める
また,これらは指導の視点でもありますが,指導の検証軸でもあります。指導の経過の中でその特徴的な苦手にしている行動がどのように変化していくのか見守っていきます。変化があまり見られないようなら指導方法を見直す必要があります。逆に,どんどん特徴的な部分が変化していくようであれば,今の指導方法でどんどん進めていきます。普段の生活の中でも,効果的な指導だったのか検証していきます。
視点1に問題があったのか,視点2なのか,あるいは視点3の指導体制の組み立て方に問題があったのかなど,まさに検証していく視点でもあるのです。
本書の中で,私が学習してきたことを用いて大脳の神経細胞について説明しているのですが,本当にこの考えでいいのだろうかという思いは常にありました。
ある日,何気なくテレビを見ていたら,NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』(2013/5/13放送)という番組が目にとまりました。その番組では,脳リハビリテーション医の酒向正春先生の生き方,考え方がよくわかるように紹介されていました。私は,特に,次の3つのポイントで大きな衝撃を受けました。
@残った「脳力」を最大限に引き出す
Aチームでフットワークよくつながる
Bあきらめない力こそ,人生を切り開く最高の能力
私は,大学で学んだ大脳生理学の入門的な知識だけを頼りにして,大脳の動きを活性化させる指導の仮説を立てたことに多少の迷いや不安がありました。第1のポイントの,脳医学者でもある酒向先生の「残った『脳力』を最大限に引き出す」という専門家の言葉を聞き,何か後押しをしていただいたような錯覚を抱きました。もちろん,酒向先生の言葉と私が立てた仮説は,重ならないとは思うのですが,脳に秘めた力を生かそうとすることには変わりないと思いました。
第2のポイントは,酒向先生が進めるリハビリは医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士などのチームで一人の患者を支えるシステムのようです。教育現場でも,一人の教師だけで教育をすることに限界を感じ,本書では,何度も教育体制=チームのことを提案しています。わくわくしながら酒向先生の『あきらめない力』(酒向正春著 主婦と生活社)を読ませていただきました。
第3のポイントは,私たちがあきらめたら終わりだと,何度も挫折感を味わう中,自分に言い聞かせてきた言葉でもありました。分野や実践しておられる幅や内容ははるかに違うのですが,私にはこの言葉が心に刺さりました。
ご興味のある方は『あきらめない力』が参考となりますので,お手に取ってみてください。
なお,本書は発達障害のある子が持ちがちな困難さを多く取り上げていることから,タイトルに「発達障害のある子ども」としましたが,発達障害のある子どもだけでなく,いろいろな子どもの指導に役立つと考えています。事例も発達障害の子どもに限って行った実践ではありません。
つたない実践ですが,全国の現場の先生方に何か役に立つかもしれないと思いまとめました。ぜひ,子どもたちのためにチームで実践していただきたいと思います。
著者 /鬼 秀範
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- 明治図書
- こどもの出来ないばかりを見てしまいがにでしたが 原因を追及するのに参考になり 助かりました2021/3/3150代・女性