- はじめに
- 第1章 社会科授業に欠かせない指導スキルのポイント
- 1 社会科授業に欠かせない指導スキルとは
- 2 8つの視点からの指導スキルのポイント
- 第2章 社会科授業の指導スキル70
- 探究的な技能・方法・社会体験
- 1 社会科授業づくりのための読書のスキル
- 2 社会科授業づくりに活かす情報の収集・整理・管理のスキル
- 3 社会科授業づくりのための社会体験のスキル
- 生徒の実態や興味・関心の傾向の把握
- 4 生徒の興味・関心の傾向を把握するスキル
- 5 小学校での学びを中学校の学びに円滑に接続するスキル
- 6 生徒の個性や多様性を把握し,授業づくりや実践に活かすスキル
- 7 「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習ルールづくりのスキル
- 授業づくり
- 8 社会科授業理論を学び授業づくりに活かすスキル
- 9 社会科のねらいを意識して授業を設計するスキル
- 10 生徒の興味・関心・意欲から学習問題をつくり出すスキル
- 11 社会諸科学の成果から学習内容となる概念的知識を見つけ出すスキル
- 12 学習内容を反映し,生徒にとって具体性のある教材を選択し構成するスキル
- 13 教科書を活用した社会科授業づくりのスキル
- 14 説明する力や議論する力を育てる授業づくりのスキル
- 15 社会科授業を開始する前の学習環境づくりのスキル
- 16 教科間連携で授業を設計するスキル
- 指導計画
- 17 内容のまとまりで単元を計画するスキル
- 18 単元構造図をつくるスキル
- 19 年間指導計画をつくるスキル
- 20 地域や多様な人々とのネットワークをつくるスキル
- 教授学習活動・学習方法
- 21 選択・判断を迫る発問のスキル
- 22 生徒が学びの意味を実感できる発問のスキル
- 23 思考を揺さぶる教材・教具の活用のスキル
- 24 班づくりと班活動を促すスキル
- 25 学習活動の中で生徒の興味・関心・意欲を喚起するスキル
- 26 生徒の思考を支援するシンキングツールを効果的に活用するスキル
- 27 「主体的・対話的で深い学び」を実現する板書のスキル
- 28 授業開始前5分間の板書のスキル
- 29 「主体的・対話的で深い学び」を実現するノート指導のスキル
- 30 効果的な学習のまとめ方のスキル
- 31 生徒に単元学習の見通しをもたせ振り返りを促すスキル
- 教師の話法・言葉かけ・演技・応答
- 32 生徒の集中力を高める話し方のスキル
- 33 授業における言葉かけのスキル
- 34 生徒を授業に引き込む演技・表現のスキル
- 35 生徒が発言しやすい雰囲気をつくるスキル
- 36 自己有用感を高める生徒の発言・行為への応答のスキル
- 学習評価
- 37 単元の指導計画と結びつけた評価計画の作成のスキル
- 38 単元の学習過程で学習の改善につなげる評価のスキル
- 39 思考力を評価するペーパーテスト作成のスキル
- 40 判断力を評価するペーパーテスト作成のスキル
- 41 ルーブリックを活用した「思考・判断・表現」の評価のスキル
- 42 「主体的に学習に取り組む態度」を評価するスキル
- 授業の評価と改善
- 43 自分の社会科授業を評価し改善するスキル
- 44 同僚と社会科の授業研究会や研修会を進めるスキル
- 45 研究授業の事後検討会を活性化するスキル
- 46 生徒とともに授業をつくり改善していくスキル
- 47 「実践記録」を書くことを通して授業を省察するスキル
- 48 アクションリサーチを通した授業改善のスキル
- ICTを活用した授業づくりと指導
- 49 インターネットを活用して授業のための情報を収集するスキル
- 50 ICTを効果的に活用した授業のスキル
- 51 ICTを使って生徒の協働的・対話的な学習を促すスキル
- 52 ICTを使って小テストやアンケートを行うスキル
- 地理的分野の授業づくりと指導
- 53 「地理的な見方・考え方」を働かせた授業づくりのスキル
- 54 地域素材を活用した授業づくりのスキル
- 55 郷土資料を活用するスキル
- 56 現地での調査・観察のスキル
- 57 地形図や空中写真を活用するスキル
- 58 地図や図を用いて整理するスキル
- 歴史的分野の授業づくりと指導
- 59 「歴史的な見方・考え方」を働かせた授業づくりのスキル
- 60 各時代の特色や時代の転換を大観するスキル
- 61 歴史事象の意味や意義を捉えるスキル
- 62 歴史学習を踏まえて現代の諸課題について考察・構想するスキル
- 63 歴史への興味・関心を高める導入づくりのスキル
- 64 資料・史料を活用して学びを深めるスキル
- 公民的分野の授業づくりと指導
- 65 「現代社会の見方・考え方」を働かせた授業づくりのスキル
- 66 主権者教育としての公民的分野の授業づくりのスキル
- 67 ESD(持続発展教育)としての公民的分野の授業づくりのスキル
- 68 公民的分野の授業で世界的課題を扱うスキル
- 69 公民的分野の授業で論争問題を見出し議論を活性化するスキル
- 70 公民的分野の授業で社会参加を学習方法に取り入れるスキル
- おわりに
はじめに
本書のキーワードは,中学校社会科の「指導スキル」です。ここでの「指導スキル」は,社会科教師が教職生活を通じて学び続け磨いていくべき,社会科の指導に欠かせない知識・能力・態度の総体として捉えたいと思います。
しかし,一口に「社会科の指導に欠かせないスキル」と言っても,その言葉だけではあまりに抽象的であり,社会科教師の数ほどに多様な指導スキルを個別に語ることができるでしょう。社会科教師が指導スキルを具体的に捉え,それらを学び,自らのものとして磨いていくためには,一定程度の客観性・体系性とともに,実践性が確保されたスキルの明示の仕方が求められると考えます。そうした考え方から,「社会科の指導に欠かせないスキル」は,次のような観点に基づいて説明していくことが大切だと思います。
@社会科の指導スキルを捉える基本的な枠組み
A枠組みから導かれるスキルの具体的な内容
Bそれらのスキルが授業において発揮される具体的な実践の姿
一方,教育が目指す人間像や能力観は,時代の社会のあり方や要請により変化していくものです。したがって,社会科の指導スキルのあり方も固定的・画一的に捉えるのではなく,時代の社会の変化にあわせて柔軟に捉えるとともに,絶えず更新していかねばなりません。直近のいくつかの教育課題について言えば,2017(平成29)年告示の学習指導要領では,子どもに育成することを目指す資質・能力が,「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の3つの柱に整理され,それらの資質・能力の育成のために「主体的・対話的で深い学び」(いわゆるアクティブ・ラーニング)の実現に向けた授業改善が求められています。2019(平成31)年4月に文部科学省が示した「GIGAスクール構想」では,子どもたち一人ひとりに公正に個別最適化され,資質・能力を一層確実に育成できる教育ICT環境の整備が謳われ,教師に対しては,子ども1人1台の端末の利用を踏まえたICT活用指導力の向上を求めています。また,2021(令和3)年1月の中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」では,子どもたちの「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現するために,教師に対しては,子どもたち一人ひとりの特性や学習進度,学習到達度等に応じた指導方法や教材の工夫とカリキュラム・マネジメントを求めています。こうした今日の社会の変化に対応した教育改革の動向を踏まえるなら,社会科教師の指導スキルも,子どもの学びの主体化・多様化・個別化に応じるように捉え直しブラッシュアップしていかねばならないでしょう。
本書では,こうした今日的教育課題を踏まえながら,第1章で,社会科の指導スキルを捉える基本的な枠組みと視点を示しました。第2章では,枠組みと視点をもとに12ジャンル70スキルを設定し,それらのスキルにおいて押さえるべきポイントとスキルを発揮した実践例を具体的に示しました。執筆者は,社会科教育に関する研究と実践の経験豊かな中学や大学等の教師たちにお願いしています。読者の皆様には,本書で示す70の指導スキルを,単にノウハウとして受け止めるのではなく,それぞれのキャリアステージに応じて社会科の指導スキルアップのための自己課題を明確に意識しながら,「自分ならばどうする」という問いをもって読み進めていただきたいと思います。そうした中で,社会科における子どもの学びを一層促進し豊かなものにしていくための指導スキルを学び身に付け,また伝えていく手立てを見出していただければ幸いです。
2022年4月 /梅津 正美
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- 明治図書
- 学びがいがあります。ありがとございます。2023/5/340代・教委
- 初任から中堅の研修用に役立ちます。場合によっては小学校社会のスキル大全と併用するといいかもしれません。2022/6/1740代・中学校教員
- 今回、経験のない中学校の授業参観をするにあたり、視点に役立ちそうです2022/5/1440代・小学校管理職
- 社会科授業づくりに関するヒントが実践例や考え方とともに紹介されていて参考になった2022/5/730代・中学校教員