- 山ちゃんのボディパ!
- 特別支援教育
本日の動画
すべての子どもたちがN響と共演
クラシックメドレーin久留米
※YouTubeの動画にリンクしています。
いかがでしたか。長い演奏ですが、連載の最終回でしたのでどうしてもご紹介したかった映像です。
私は、このような活動を「ボディパーカッション教育」と名付けています。
私が好きな詩に「わたしと小鳥とすずと」(金子みすゞ)という作品があります。この作品でうたわれていることが、ボディパーカッション教育活動で実現できたら、と思って取り組んでいます。
楽器ができなくても、歌が上手に歌えなくても、楽譜が読めなくても!
ボディパーカッションの合言葉は、「すべての子どもたち」です。それは、「楽器ができなくても、歌が上手に歌えなくても、楽譜が読めなくても」どの子も一緒にできる音楽活動であり、リズム身体表現活動だからです。
本日の動画でご紹介した子どもたちも、それぞれに能力の違いや特徴があります。具体的には、当時担任していた健常な子どもたち、地域の小中学生、発達障害の児童(ADHD、アスペルガー症候群)、久留米聾学校小学部、中学部の児童生徒(聴覚障害)、視覚障害の児童(先天性遠視)等です。
前代未聞?の共演!
「音楽的なリズム身体活動の中で、すべての子どもたちが様々なハンディを乗り越えて音を楽しんでもらいたい」という思いをNHK交響楽団第一コンサートマスターの篠崎史紀氏にお話ししたとき、「ぜひ、一緒に取り組んでみましょう」と言っていただきました。しかし、実際問題として、「聴覚障害の子どもたちは音の聞こえが難しいので、目で確認して健常者と一緒に演奏するとリズムがずれてしまう」「発達障害の児童は、途中で演奏をやめてしまったり、声を上げたりすることも考えられる」ことなども伝えました。
この共演は、日本を代表するオーケストラの素晴らしい演奏に“手拍子、お腹をたたく、足踏み、”などの雑音?を組み合わせるわけです。音量の大きいポピュラー系の電子楽器を使用して音量を調節できるのであれば音のバランスなどもとりやすいでしょうが、繊細な弦楽器の生音に足踏みなどを入れることは、到底常識では考えられないことでした。
それでも、篠崎氏と話し合う中で「チャレンジしてみよう!」ということになり、夢の共演が実現したのです。子どもたちは、指揮者を真剣に見つめながらテンポを感じ取り、みんなと一緒に一体感を感じながら、楽譜を一切見ないでのびのびと演奏できました。一番緊張しているのは私であったと思います。
実は二人の指揮者で演奏
この演奏には、実は二人の指揮者がいます。一人は私。オーケストラの音楽に合わせて、子どもたちのボディパーカッションの演奏を指揮します。そしてもう一人の指揮者は、舞台の下で白い手袋を付け、手話を交えながら指揮をしています。映像をよく見ると確認できます。聾学校の生徒は、舞台下の第2の指揮が見やすいように、ひな壇の最上段で演奏しているのです。
子どもたちは、障害の種別によって見ている指揮者が違うのです。すべての子どもたちが共演できるように、このように2段階での指揮という工夫をして、このボディパーカッション演奏を行いました。
それでも、やはりぴったりリズムが合わない演奏が随所に見られます。しかしここでは、演奏している子どもたちの心が一つになることを目的としています。15分近くの演奏を、様々な立場の子どもたちが一体感を持ってできたということは、大変充実した経験となりました。その意味で、この演奏は大成功と言えるのだと思います。
ボディパの楽しさが受け継がれていく!
このとき出演してくれた聾学校中学部の男子生徒の一人は、聴覚障害というハンディがありながら大学を卒業し、現在は、当時在籍していた福岡県立久留米聴覚特別支援学校に講師として働いています。そして、聴覚障害の子どもたちへボディパーカッションの楽しさを伝えてくれています。
すべての子どもたちが楽しめるボディパーカッション教育。ぜひ、みなさんも一緒に取り組んでみましょう!