山ちゃんの特別支援教育 de ボディパーカッション!
ボディパーカッション教育考案者の山田俊之先生が、すべての子どもたちとコミュニケーションがとれるとっておきの活動を伝授!
山ちゃんのボディパ!(11)
ボディパで参加!「欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞」
久留米市立久留米特別支援学校教頭山田 俊之
2013/4/10 掲載
  • 山ちゃんのボディパ!
  • 特別支援教育

 いかがでしたか。おなじみ「欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞」です。なぜこの連載で仮装大賞なの?と思われたかもしれません。実は、この仮装大賞への出演のきっかけは、発達障害の子どもを持つ一人のお父さんからの誘いでした。本日はそのドラマをご紹介しましょう。

とにかく楽しく予選に参加!

 今から8年前、平成17年度の小学校3年生音楽科の教科書(教育出版)に、ボディパーカッション曲「花火」(山田俊之作曲)が掲載されました。私は、毎週土曜日に子どもたちのボディパーカッションサークルを行っていましたが、その練習中に保護者と、「今回教科書に掲載されたから何か記念になる行事ができたらいいですね」と雑談していました。すると、保護者の一人のお父さんが「『欽ちゃんの仮装大賞』に出られたらいいですよね! この前テレビで募集していましたよ」と言いました。私は、まさか出演できるなんて夢にも思っていませんでしたので、とりあえず「そうですね」と軽く返事をしていました。
 それから1週間ほどして、先日の保護者のお父さんから連絡がありました。「テレビで、○月○日の日曜に福岡予選があると言ってました。応募したらどうですか? よい記念になりますよ」。私たちが住んでいる久留米市から、予選会場のある福岡までは30分程度でいけるので、応募してみることにしました。
 予選では、ほとんど仮装らしいことはせずに、衣装を花火らしくまとめ、元気いっぱいにボディパーカッション「花火」の演奏をしました。結果は、「合格!」。楽しく予選会に参加させていただき、子どもたちもみんな大満足でした。

ボディパサークルは健常児と特別支援の子どもの区別が全くなし!

 仮装大賞の応募を勧めてくれた父親の子どもは、小学校の特別支援学級に通う児童でした。その父親は、ボディパーカッションの練習や行事のときに、よく準備やお手伝いをしてくれ、その度に「子どもがいつも家で練習しています。ボディパーカッションの練習があるのをとても楽しみにしています」と言っていました。
 このボディパーカッションサークルは、小中学生約20名のサークルで、健常児、発達障害児の関係なく、みんな一緒に練習をしていました。この連載で以前ご紹介した聴覚障害の子どもたちも、このサークルで一緒に合同練習することがあります。

いよいよ本選出場!

 さて、予選の後、なんと幸運にも本選への出場が決まりました。いよいよ東京での本選の日が迫ってきます。当初は、まさか仮装大賞に応募してここまでくるとは夢にも思っていなかったので、本選への出演が決まってから、いったいどのようにしたら「仮装大賞にふさわしく」なるのかをみんなで一生懸命考えました。
 出演する子どもたちは約20名。テーマは「花火」です。人数も多いせいか迫力はあったのですが、音が中心のパフォーマンスですから、「仮装大賞」という視点からは少し外れていたように思います。しかし、様々な方からアドバイスを頂き、次の3点をポイントとして取り組みました。

1 花火のイメージを出すために、全身を黒くして、顔も黒く塗る。

(このことに関しては、自分の子どもがせっかくテレビに出るのに顔がわからなくなるという保護者の意見もあり大変苦慮しました。(笑))

2 花火の火花をどのように表現できるか。
3 打ち上げた花火の音だけではなく、仕掛け花火(ナイアガラ)の雰囲気を衣装でも出してみる。

 そしてとうとう本選出場! それが本日の動画です。
 結果は、予想もしなかった20点満点中19点という高得点をいただいた上に、「ファンタジー賞」まで受賞でき、大変よい思い出になりました。
 さらに後から聞いてびっくりしたのは、本選に出場したグループおよび個人は25組だったのですが、予選応募総数は5500組だったそうです。

ボディパで広がる様々な輪

 今回の「欽ちゃん&香取慎吾の仮装大賞」出演では、子どもたちにとってすばらしい思い出をつくることができました。発端は、ボディパーカッションの教科書掲載の記念だったのですが、それ以上にうれしかったのは、東京に一緒に引率をしていただいた発達障害児の父親が、今回の出演に対して心から喜んでくれたことでした。
 ご覧頂いた動画の中には、その発達障害の子どもも出演しています。みんなで一緒に一つのことに取り組む楽しさ、大勢の前で発表した達成感、一つのことにチャレンジする精神。仮装大賞に限らず、ボディパーカッション活動を通して、子どもたちがそんな経験をつむ機会をぜひたくさんつくっていってほしいと思います。

山田 俊之やまだ としゆき

2013年春より久留米市立久留米特別支援学校教頭。九州大学大学院人間環境学府教育システム専攻修士課程修了。
1986年11月、小学校4年生の担任の時、学級活動の中で誰でも簡単にできる手拍子、ひざ打ち、おなかを叩く、声(ボイス)を出すなどのリズム身体表現を「ボディパーカッション」と名付け教育活動を始める。その後、現職教諭として小学校、養護学校(知的障害)、聾学校(聴覚障害)、学童保育所などの教育現場でボディパーカッション教育を取り入れた実践を行う。
平成21年度NHK障害福祉賞最優秀受賞。平成23年度読売教育賞(特別支援教育部門)最優秀賞。
平成17年度文部科学省検定済小学校3年音楽科教科書「音楽のおくりもの」(教育出版)にボディパーカッション曲「花火」、平成24年度特別支援教育文部科学省編集中学部音楽科教科書「音楽☆☆☆☆」にボディパーカッション曲「手拍子の花束」が採用される。
ボディパーカッション教育振興会HP

(構成:木村)
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