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草はホントに緑色?
ある図工の時間、僕は同じように「草は何色ですか?」と子どもに問いました。すると子どもたちは、「緑と黄緑です」と答えました。
「そうなんや」と言いながら「草は緑と黄緑色」と板書し、名刺大の紙を一人1枚配りました。そして、次のように指示しました(よければみなさんも読みながらやってみてください)。
- まず、鉛筆で紙の下の部分に草をたくさんかいてください。
- 次に、紙の右上の方に太陽をかいてください。
- さらに、左上に月をかいてください。
- では最後に、月と太陽の間に星をかいて、紙を裏に向けてください。
その後、このように話します。
「今、先生は太陽をかいてくださいと言いましたが、多くの人は、丸をかいて、そのまわりから線を出したような太陽をかいているのではないでしょうか? 本当に、太陽からそんな線が出てるんですか?
また、月をかいてくださいと言いましたが、なぜか多くの人が三日月をかいていると思います。どうして、半月や満月をかかなかったのでしょうか?
そして、星をかいてくださいと言ったら、ほとんどの人は五芒星のようにかいているのではないでしょうか? なぜ、土星のような星をかく人がいないのでしょうか?」
そのように子どもたちに話し、意見を聞きます。すると、「そういうものと思って見てたけど、たしかに全部本当じゃないなあ…」という意見が出てくると思います。
そこで、もう一度子どもたちに聞きます。
「では、もう一度聞きますが、草は何色ですか?」
すると、困った顔をしたり、いろんな意見が出てきたりすると思います。そうした葛藤状態で、色鉛筆と画用紙をもって、草を1本だけかきに、外に行かせます。そのときには「すぐにかくのではなく、触ってみたり、においをかいでみたりするといいよ」と話します。
絵をかく中で子どもたちは、1本の草の中に、緑色だけでなく、茶色、白色、ピンクなど、様々な色があることに気が付きます。そこで、気付きを話し合わせながら、「物事はすぐに頭で判断するのではなく、じっくり見なくてはわからないことがある」ということを感じられるようにします。その後、「様々な作品を制作したり、観賞したりするときには、草をかいたときのようにじっくり観察するといいよ」と話します。
人は、「○○はこういうものだ」というイメージを強くもっています。いろいろなものにレッテルを貼って生きています。しかし、そのものを見れば、形も色も様々であり、“このようなもの”という特定はできません。
人はみな、よいも悪いも50%ずつ
さて、この授業はここでは終わりません。さらにそこから、クラスの仲間にも目を向けていきます。
「○○君はいい人ですか?」と問います。
そして、「○○君は、いい人でも悪い人でもない。○○君です。よく見なければわかりませんよ」と伝えます。クラスの仲間は、子どもたち同士、お互いにレッテルを貼って生活しています。これまでの付き合いの中で、あの子はいい子だ、あの子は言っても変わらない…など、様々なことを感じています。しかし、表に見えている部分だけでなく、様々な角度から相手を観察できるようにならなければ、これまでの人間関係を引きずったままになってしまいます。特に、まわりから、この子は問題があるなあ,というレッテルを貼られてしまうと、変わりたくても変われなくなってしまいます。
大切なことは、相手のよいところは何か、また、問題を起こしてしまったのなら、なぜその子はそのような行動をとってしまったのかを子どもなりに考えられるようになっていくことです。
人はみな、よいも悪いも50%ずつあります。どちらを見ているのか、どちらを見ようとしているのかで、人間関係も大きく変わってくるものです。そんな話し合いを、この授業を通して子どもたちとできれば、仲間との関係に変化が出てくるかもしれません。
ありがとうございます。そしてこの授業は理科で思いっきり使える!!と思いました。ありがとうございます!!!!
授業と学級づくりの見事な実践です。教育にとって、教育技術は大切です。教育技術とは、授業をつくり、学級をつくり、人間を育てていくのですよね。金先生の実践に、教育実践の新しい息吹を感じます。ご活躍をお祈りしています。