- 著者インタビュー
- 道徳
この徳目こそあらゆる徳目の中でもっとも重要なものであると考えるからです。「畏敬の念」なしでは、ほかのあらゆる道徳的価値は、その価値の重みを失い、軽々しいものとなってしまいます。「畏敬の念」があってこそ、ほかのあらゆる道徳的価値がその価値としての重みを取り戻すことができるのです。
そうした時代の変化に左右されない、大きな価値があるからです。また最近では、教育再生会議や中央教育審議会などで、子どもたち、若者たちの規範意識の低下が指摘されていますが、私は、規範意識の根底には、このような感覚が不可欠だと思っています。「畏敬の念」なしの規範意識など、薄っぺらなものでしかありえません。この「畏怖の感情」を子どもたちの心にはぐくんでいかなくては、本当の意味での規範意識の確立など不可能だ、と思っているのです。
まだ不十分とは思いますが、ある程度はしたと思います。私は、全国の教育センターなどで「道徳教育」の講座を担当させていただくとき、いつもこう申し上げてきました。
「どうぞためらうことなく、“畏敬の念”を子どもたちに教えていってください。資料や指導方法に工夫を凝らして、積極的に授業の中で指導してください。そして、これは子どもたちの心に響いたと心底思える授業実践ができたときには、その記録を私のもとにお送りください。それが一定数集まった際には、一冊の本としてまとめて、世に問わせてください」
と。そういう実践を集めたものが本書です。そういった意味で、この本は、これまでの道徳の本とは少し違う、特別な思いのある念願の本です。
「畏敬の念」は教師の側からみると、最も教えにくい内容項目の一つでもあるようです。見えないものは、確かに扱いにくいはずです。けれども、その難問にこそ、チャレンジすべきだと私は思うのです。難しい課題ですが子ども自身の体験や内省的な振り返り、発問の工夫、イメージの活用によって実践できると思います。
「畏敬の念」は重要であると知りながら「指導が難しい」と尻込みされている方が少なくないと思います。ぜひこの本を参考にされて、思い切って実践をされてください。また、すばらしい実践ができましたら是非、私までお送りください。