- 著者インタビュー
- 特別支援教育
「特別支援教育」という解釈を大半の先生方が、「特別な子どものための特別な教育」ととらえている場合が多いようです。それなら従来の障害児教育となんら変わっていません。「特別支援教育」の本来のねらいは特別な支援ができる先生方を育てる教育なのです。
すべての先生がすべての子どもの特性を理解し、実践することで「特別ではない特別支援教育」になるのです。「困った子ども」ではなく「困っている子ども」のサインを見逃さない専門性をつけるための援助になればと思います。
今回学習指導要領で改訂された「自立活動」の内容を中心にわかりやすく解説し、様々な障害種別の特別支援学校で実践されている「子どもを中心とした自立活動」の最新事例を紹介しています。重度の子どもへの身体の動きやコミュニケーションの指導、発達障害や知的障害の子どもへの感覚運動の指導等を「人間関係の形成」との関係でまとめています。
「自立活動」は本来、特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室で教育課程上組み込まれるものです。通常の学級では教育課程上の位置づけはできませんが、内容を参考に教科の学習等での配慮は十分できます。例えば基本の運動等で不器用な子どもたちに対して、ボディーイメージを高める指導をしたいときにマットや鉄棒だけでなく、特別支援学校で使用している遊具の工夫や運動の手順をカード化し流れを構造化するなど、「環境の認知」「身体の動き」の内容を参考に、プログラム化することができます。
一人ひとりのニーズに合った指導をするためには、子どもの特性を知ることが大切です。対処療法として、国語や算数等でスモールステップの指導を行うことも大切ですが、子どもたちのできない背景、困っている背景を知ることで、はじめてニーズに合った具体的な指導方策が出てきます。そのひとつのベースになっている「からだ」と「こころ」の基盤を整えることが今必要だと考えます。幼児から青年期にかけて各ステージで必要な「からだ」をバランスよく育てることで、二次的な歪みを予防できると思います。
すべての先生が子どもの困っているところを理解し、二次的な問題を引きおこさないように予防し、精度の高いわかる授業を行うことが大切だと思っています。そのためには、「なぜこのような行動をするのか」の背景を知り、それを踏まえた上での子どもがわかりやすい実践が必要になります。「わからない」、「困った」時には一人で悩まずに「one for all, all for one」が大切です。本シリーズはその「困った」「どうすれば」の解決のために子どもの理解の仕方と具体的指導法を「インフォーマルなアセスメント」「自立活動」「不器用」「就学前」をキーワードに構成しています。