著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
これで中1数学のスタートダッシュ成功は間違いなし!
岡山県矢掛町立矢掛中学校長川上 公一
2013/2/25 掲載

川上 公一かわかみ こういち

岡山県矢掛町立矢掛中学校長。
1956年淡路島生。岡山大学教育学部卒業。専攻は代数学、数学教育学。教材開発・授業実践及びテクノロジーを数学教育に取り入れる取組を中心に活動。岡山県内公立中学校、岡山大学教育学部附属中学校等を経て現職。「地域とともに歩む開かれた学校」を目指す。
主な著者に、『中学校数学科 中1ギャップを撃退する指導のアイデア36』(明治図書)、『「学校力」を培う学校評価 矢掛町の挑戦』(三省堂、共著)

―本書では、算数でつまずきが生じやすい36の学習内容を取り上げています。この中でも、中学1年で特にしっかりと復習やつまずきの手当てをするべきなのは、どのような内容でしょうか。

 中学1年は、新しく学習する内容に加えて、小学校で学習した内容を学び直す期間です。
 「正の数・負の数」の計算のときに小数・分数の学び直しを行い、「文字の式」や「方程式」の学習で「単位量あたり大きさ」や「速さ」の学び直しをしたいものです。また、事象を関数として見たり、関係を図や表で示したりすることも大切です。

―本書の中には、気付いたことや、考え方と式をセットで答えさせるような問題もみられます。このような形式の問題を取り入れたのはなぜでしょうか。

 今、小学校でも中学校でも、授業において数学的なコミュニケーションが重視されています。そこでは、自分の気付きや考え方を説明するということが大きな意味をもつわけです。問題から答えを出す過程を示すことは、自分の気付きや考えを説明することに他なりません。この意識を高めることが、数学的な表現力の向上にもつながります。

―本書では、解説ページの中で、先生に向けて指導のポイントも示されています。本書を活用して算数の「学び直し」指導を行うためのコツを教えてください。

 私が考える「学び直し」のポイントは、以下の3つです。

  • 算数の内容を詳細に把握し、つまずきを早期に特定し手当てする。
  • 数学の内容との関連を考えながら、適切な位置付けで指導する。
  • 必要以上に煩雑な計算練習などは行わない。

 「学び直し」は単なる復習ではなく、このように吟味を重ねながら新しい内容と既習事項を構成していく過程でもあると考えています。本書はその大きな助けとなるはずです。

―最後に、読者の先生方に向けてメッセージをお願いいたします。

 前著『中学校数学科 中1ギャップを撃退する指導のアイデア36』では、中学1年の数学の内容について、つまずきやすい箇所とその原因を算数で学習したことと関連させながら考察し、どのように克服していくかについて考えました。
 本書では、算数でつまずきやすい学習内容にポイントを絞り、「学び直し」を行うことで、中1ギャップを撃退することを考えました。「チェック問題」でつまずきやすい学習内容の基礎・基本が身に付いているかどうかを確認した後、「トレーニング問題」でつまずきやすい学習内容をしっかり学び直すというスタイルをとっています。また、指導に当たられる先生方に向けた解説を読んでいただければ、小学校での学びのスパイラルを把握し、それらが中学校での学びとどのように結び付いているかをご理解いただけると思います。

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著者による、中1ギャップを予防するための小学6年生体験授業「0より小さい数をみつけよう」

(構成:矢口)
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