- 著者インタビュー
- 算数・数学
実は、最初から多様な考えを引き出そうとして考えた問題はありません。この本で紹介した問題の多様な考え方は、すべて生徒から学んだものです。いろいろな考えを引き出そうと授業をしていると、生徒の考え方から学ぶことが多いものです。
いくつかの定石があると思います。結論から考えさせるとか、補助線を引かせてみるとか…。ただ、一番大切にしたいのは、「今まで学習したことが何か利用できないか」と考えさせることです。既習事項を活用することで問題が解決できたという喜びを味わわせることが、ひいては数学の有用性を感じさせることにつながるからです。
とにかく、生徒のよさを見つけることです。「無駄なことを記述しているから減点」という発想ではなく、「この部分の考え方がよいから加点」という考え方で採点すべきです。
また、厳密な採点基準をつくろうとすると、それだけで疲れてしまいます。最初は、「生徒の意欲が高まればそれでよし」ぐらいの感覚で採点すればよいと思います。
この本で紹介した解法をすべてやってやろうというスタンスではなく、じっくりと「生徒とともにどこまで考えることができるかな」という気持ちで授業を進めることが大切だと思います。結論を急ぎ、教師がすべて解説をするというのでは、生徒の思考力は育ちませんし、生徒が感動することもないのです。どこまで学習するかということよりも、どのようにして学習するかということの方が大事です。
この本の中でも述べているとおり、ただ単に問題を解かせるだけでは、生徒の思考力は育ちません。ぜひ、「生徒とともに考える」というスタイルで授業を行ってみてください。きっと、生徒の考えや発想から先生自身が学ぶことが出てくると思います。「あの生徒が、こんなこと考えてたんだ」と理解できたときは、とてもうれしく感じるはずです。