著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
丸暗記や難問・奇問では身に付かない、真の数学的思考力を育てよう
熊本市立東野中学校教頭木 徹
2014/4/11 掲載

木 徹たかき とおる

平成13年4月から平成23年3月まで熊本大学教育学部附属中学校に勤務。
現在、熊本市立東野中学校教頭。
著者に、『思考力・表現力がぐんぐん伸びる! 数学レポート実践集』(明治図書)

―本書では、数学的な思考力を育てるために教師がすべきことの1つとして、「生徒の多様な考えを引き出す」ということがあげられています。そのために、問題をつくるうえでどのような工夫をされていますか。

 実は、最初から多様な考えを引き出そうとして考えた問題はありません。この本で紹介した問題の多様な考え方は、すべて生徒から学んだものです。いろいろな考えを引き出そうと授業をしていると、生徒の考え方から学ぶことが多いものです。

―思考力が問われる問題では、考える手がかりがつかめないために解くのを諦めてしまうような生徒もいるかと思います。そんな生徒が自ら手がかりをつかめるようにするには、どういった支援をすればよいのでしょうか。

 いくつかの定石があると思います。結論から考えさせるとか、補助線を引かせてみるとか…。ただ、一番大切にしたいのは、「今まで学習したことが何か利用できないか」と考えさせることです。既習事項を活用することで問題が解決できたという喜びを味わわせることが、ひいては数学の有用性を感じさせることにつながるからです。

―本書に収録されている問題の多くは、解答が複数考えられたり、解答に至るまでの道筋が多様だったりしますが、そういった解答を評価(採点)する際に気を付けるべきことを教えてください。

 とにかく、生徒のよさを見つけることです。「無駄なことを記述しているから減点」という発想ではなく、「この部分の考え方がよいから加点」という考え方で採点すべきです。
 また、厳密な採点基準をつくろうとすると、それだけで疲れてしまいます。最初は、「生徒の意欲が高まればそれでよし」ぐらいの感覚で採点すればよいと思います。

―授業の中で、本書で紹介されている問題を効果的に扱うために注意すべきことを教えてください。

 この本で紹介した解法をすべてやってやろうというスタンスではなく、じっくりと「生徒とともにどこまで考えることができるかな」という気持ちで授業を進めることが大切だと思います。結論を急ぎ、教師がすべて解説をするというのでは、生徒の思考力は育ちませんし、生徒が感動することもないのです。どこまで学習するかということよりも、どのようにして学習するかということの方が大事です。

―最後に、読者の先生方に向けてメッセージをお願いいたします。

 この本の中でも述べているとおり、ただ単に問題を解かせるだけでは、生徒の思考力は育ちません。ぜひ、「生徒とともに考える」というスタイルで授業を行ってみてください。きっと、生徒の考えや発想から先生自身が学ぶことが出てくると思います。「あの生徒が、こんなこと考えてたんだ」と理解できたときは、とてもうれしく感じるはずです。

(構成:矢口)
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