著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学級崩壊に対する新しい処方箋がここに
北海道北広島市立大曲東小学校教諭山田 洋一
2014/7/18 掲載
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  • 教師力・仕事術
 今回は山田洋一先生に、『THE 教師力』シリーズの最新刊として発刊された『THE 学級崩壊立て直し』について伺いました。

山田 洋一やまだ よういち

1969年北海道札幌市生まれ。北海道教育大学旭川校卒業。2年間私立幼稚園に勤務した後、公立小学校の教員になる。教育研修サークル・北の教育文化フェスティバル代表。思想信条にとらわれず、現場で役立つこと、教師人生を深めるものからは何でも学んできた。主な著書に、『山田洋一―エピソードで語る教師力の極意』『THE 新採用教員〜小学校教師編〜』『小学校初任者研修プログラム 教師力を育てるトレーニング講座30』『教師力トレーニング・若手編 毎日の仕事を劇的に変える31の力』(以上、明治図書)などがある。

―今回の書籍は、『THE 教師力』シリーズの1冊として、テーマは「学級崩壊立て直し」です。本書のねらいと、その背景にある想いについて教えて下さい。

 様々な公的機関は、「学級崩壊」に対する取り組みと、その減少を強調してアナウンスしています。ところが、現場教師の実感としては、むしろ「学級崩壊」は増えています。その上、崩壊のタイプやパターンも多様化しています。そうした背景に対して、多様なキャラクターや立場の教師が、「立て直し例」を提示することによって、現場のお役に立てると考え、本書を刊行しました。

―本書を手にとられる方は、学級崩壊に実際に悩まれていたり、支援をされている方が多いと思います。側方支援と直接指導ではまた立場も変わってくるかと思いますが、まず大切になってくることは何でしょうか?

 まず、従来の処方箋を捨てることです。
 例えば、以前であれば「立て直し」にむいたタイプの教師は、父性的な教師でした。強い指導力によって、「言うことを聞かせられる」教師が、「立て直す」際に適したキャラクターと考えられていました。ところが、そうした教師たちの「父性」だけでは、今日「立て直し」できない場合が多くなっています。「立て直し」に入っても十分成果を上げられないか、あるいは自分で学級を持っていても、むしろ崩壊させてしまう場合さえあるのです。
 ですから、従来の処方箋を捨てて、子供を観察することと、新しい実践知を勉強することが必要になるのです。

―「学級崩壊」と一言で言っても、近年では「静かに授業を受けているように見えるが、学習などに全く前向きでない」という“静かな荒れ”も見られるようになってきました。このような荒れにはどのような対応が有効でしょうか?

 まず第一に、子どもを「つなげる」工夫をすることです。従来であれば、放っておいても、子どもたちはある程度の深さで「つながっている」ものでした。
 しかし、現在、子どもたちは表面的に良いつきあいのように見えても、意外と言いたいことが言えなかったり、コミュニケーションのストローク数が少なかったりもします。
 そこに、意図的、計画的にアプローチする必要があります。

―学級崩壊の問題を考える際には、「予防」という視点も重要になると思います。学級崩壊を起こさない、強い学級づくりのポイントは何でしょうか?

 第一に、安心してその学級にいられるという環境を教師が整えてあげることだと考えます。
 現場教師の実感として、現代の子供たちの精神性は、「不安定」そのものだと感じています。それを解消するために、学級内の規律を早期に確立すること。さらには個々の子供たち間の「コミュニケーション・ストローク」を増やして、互いの「背景」を共有することが大切だと考えます。
 この場合の「背景」とは、個人の性質、能力、生活環境などを言います。それらを「さらけ」出しても、周囲の人が受容できているような関係を担保することが大切です。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 教育現場の変化同様、子供たちも保護者も、大きく変化しています。従来の指導が効果を上げなくなっていると、言われて久しいです。進むべき道は、2つに1つです。
 子どものことをよく知り、新しい実践知を常に手に入れ、教師という仕事の素晴らしさに胸を震わせるか。
 それとも、従来型の指導を繰り返しては、その「上手くいかなさ」を他人のせいにして、ため息をついて生きていくのか。
 あなたは、どちらを選びますか。

(構成:及川)

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