証明の準備期・導入期において、生徒が主体的に学習に取り組むことができるかどうかが、その後の学習につながる最も重要なことだと考えています。
そのためには、生徒の興味・関心を高めることや、生徒に証明の必要性を理解させること、すべての生徒が参加できる活動をつくることなどが必要になります。また、生徒一人ひとりのつまずきを生かしながら授業を展開することや、図形の学習が苦手な生徒への具体的な手だてを準備しておくことなども必要になると思います。
図形の論証力を伸ばすためには、証明をつくること(書くこと)だけでなく、証明を振り返ること(読むこと)も大切です。証明を振り返ることでそのしくみをとらえ直すことができ、証明の進め方の全体的な把握もできるようになるからです。
そこで、友だちが利用した図を見て証明方法を予想したり、1つの証明を複数の生徒に説明したり、既習事項を基に考えるよさを感じ取ったりすること等を通して、生徒が自分の証明をよりよいものに修正していく活動が、特に有効だと思います。
図形の証明の学習を始めたばかりのころは、証明を書くことに自信をもてない生徒がたくさんいます。また、実際に証明を書かせてみると、生徒の個人差も大きいものです。
このような時期は、生徒が細かな点ばかりに気を取られて、証明全体の流れを見失うことがないように指導・支援することが必要です。また、数学が得意な一部の生徒の発言のみで授業が進んでいかないようにすることも大切です。さらに、すべての生徒が理解しやすくなるように、条件に合う図をかく活動や、図形の性質を見つけるために具体物を操作する活動、根拠を明らかにして口頭で説明する活動等を計画的に取り入れていくことも必要になると思います。
本書は、授業者の視点から図形の証明指導における問題点とその対応策について考え、具体的な指導事例をあげながら、指導の工夫及び授業づくりについてまとめてみました。
特に、生徒がつまずきやすいところに焦点を当てながら、実際に授業で使用したワークシートや生徒のノート等を提示して具体的な指導及びその考え方について紹介しています。
日々の数学の授業に、本書を少しでも活用していただけたら幸いです。
ぜひ書店に並んだ折りには購入したいと思います。
数学教育の誌上で 毎回分かりやすい指導の手引き、大いに参考にさせていただいてます