- 著者インタビュー
- 社会
社会科の中でも公民的分野は、社会との関わりがとりわけ大きな分野です。そのため、「主体的に社会に参画しようとする態度をどのように育成するか」を常に意識しておくことが大切なのではないでしょうか。この点を第一に踏まえることで、単元や本時でどのような「知識及び技能」や「思考力、判断力、表現力等」を身につけることが必要か、などといった新3観点の学習評価を位置づけた授業プランが効果的に作成できるようになると期待しています。
生徒の日常生活と関連づけ、具体的事例を通して政治や経済などに関わる制度や仕組みの意義や働きについて理解し、考察・構想できるようにすることが必要でしょう。対立と合意、効率と公正などの見方・考え方を学習のさまざまな場面で働かせることで、複雑で自分とは関係がないと思っていた社会的事象を「自分ごと」として捉えられるようになり、同時にこれらの見方・考え方を鍛えることにもつながると考えます。
まず留意するのは、生徒のもつ価値観そのものを評価するわけではない、ということです。学習テーマに即して、生徒の主張の根拠となる事実・統計データなどは何か、それらを適切に用いて論理的に主張を展開しているか、といった点を見取り、フィードバックすることが大切です。そのためには、さまざまな思考ツールを活用し、その結果をワークシートなどに記入させて見取ることなどが有効でしょう。
その評価問題で、3観点のうちのどの観点を見取りたいのかを明確にしておくことが大切です。とりわけ公民的分野の「主体的に学習に取り組む態度」については「現代社会に見られる課題の解決を視野に主体的に社会に関わろうとしている」かどうかを評価規準として設定し、それを見取ることのできる問題を設定することが求められます。本書の評価問題例が参考になると思います。
「公共」では中学校の社会科以上に、主権者として、教室での学びを社会に生かすことが期待されています。しかし、その基礎となる知識や概念、制度や仕組みは公民的分野で学習します。特に、政治や法、経済、国際社会の単元で扱われる見方・考え方は、「公共」の学習の基盤となるので、「高校でも使うよ」「社会に出てからも大切だよ」といったメッセージを生徒に伝えていただきたいと思います。
本書の「授業展開例」に掲載されている「課題」は、教室で教師が生徒に問いかけたり指示したりした発言そのものを収録しています。このまま使っていただいても、生徒の実態に即してアレンジしていただいても構わないように構成されています。「公民学習って面白い」と思える生徒を一人でも多く育む一助として、本書を活用していただけることを願っています。