- 「合理的配慮」の実際
- 特別支援教育
今回紹介する事例
Lさんは、中学校の知的障害特別支援学級に在籍している3年生です。知的障害と併せて自閉的傾向があります。自分の思いや考えを話すことが苦手で、コミュニケーションがうまくとれません。
この事例は、学習活動等で自信がもてるように支援をするとともに、コミュニケーション力の育成や他者と円滑に交流する力の育成を目指して、特別支援学校での学習機会や共同実習所での作業体験を確保した実践です。
Lさんについて
Lさんは、小学校から知的障害特別支援学級に在籍しています。授業では各教科担当と特別支援教育支援員と連携し、個別的な支援を受けています。日頃の生活態度は真面目で、授業にしっかりと臨んでいます。一方で、物事に対するこだわりがあり、興味・関心がある内容については持続的に取り組めますが、興味・関心がない内容については、注意が持続しません。また、授業中に、自ら進んで発表することはあまりなく、全般的に行動が消極的で受け身になる事が多いようです。
本人は、中学校卒業後、特別支援学校高等部への進学を希望し、その後は企業への一般就労を希望しています。
生徒の特性に対応した合理的配慮の実際
1 コミュニケーション力を育成するための学習の機会や体験の確保
Lさんはコミュニケーションに苦手さがあるため、修学旅行、文化祭の合唱コンクール、体育祭の各種競技、修学旅行等の学校行事において、できるだけ参加できるように、支援員が付き添う体制をとりました。
2 学習の定着が図れるようにするための配慮
学級担任は、Lさんの学習内容の定着を図るため、家庭で学習する課題をLさんの実態に応じて作成し、渡しています。課題内容は、市販の学習教材や自作のプリントを活用し、目安として1時間程度で完了できる量にしています。そのことにより、学習意欲を喚起し、達成感や成就感が実感できるようにしました。
3 学習の困難さへの配慮
Lさんの学習面の困難さを軽減し、自信をもって学習に取り組むことができるようにするために、教科担当教員による授業の際は、支援員が机間支援しながら学習状況を観察し、個別の指導や支援を適宜行っています。Lさんが学習の達成感を実感できるように、見守る、支えていくという方針で、なるべくLさんが自主的な取組ができるように配慮し、支援しました。
また、数学では、文章問題や図形の理解が苦手なため、ヒントとなる内容や手順を黒板にカードで提示したり、図形の特徴が捉えられるように方眼紙で実際に図形を作ってみたりしています。国語では、文章の読解が苦手なため、小説や説明文の読み取りのときには、重要な文章部分をアンダーラインなどで視覚的に強調して読み取りやすくする教材の工夫を行っています。
4 他の生徒と交流する体験の確保
コミュニケーション力の育成や他者と円滑に交流する力の育成を目指すために、特別支援学校での体験学習や、地域の共同実習所の各種行事や作業実習に参加する機会を設けました。
特別支援学校での体験学習では、共同実習所の生徒や特別支援学校高等部の生徒と共に、木工作品の製作に意欲的に取り組み、作業学習終了後のミーティングでは、Lさんが代表して感謝のことばを発表する機会を得ることもできました。
まとめ
知的障害のある中学生の学校活動では、学習の困難さへの対応だけでなく、進路への対応が重要になります。このLさんの事例では、進路に関する学習への支援について直接は述べられていませんが、コミュニケーション能力の向上を図る体験の機会を確保したり、特別支援学校での体験学習を行ったり、共同実習所での作業学習に参加したりする事で、将来の社会参加に役立つ社会的な経験が得られる実践がなされている事に取組の特徴が現れています。
また、こうした体験の確保を行う場合には、地域の他機関との連携が必要となりますが、その際には、特別支援学校のセンター的機能を活用することが考えられます。
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本コーナーでは、インクルーシブ教育システム構築支援データベース(インクルDB)の事例を紹介しています。
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