- 「合理的配慮」の実際
- 特別支援教育
今回紹介する事例
今回紹介するのは、特異的読み障害*1と診断された、文章の読み書きに困難さのある生徒(Aさん)に対して、タブレット型端末を活用した指導やテストでの配慮などを行った事例です。タブレット型端末は、地域支援体制の拠点となる小学校から貸与されたものを使用しました。
この生徒は通級による指導も受けており、ビジョントレーニング*2などの指導を受けました。
Aさんについて
Aさんは、LDのある中学校1年生です。見たものを記憶することや記憶にある情報を活用することが困難です。そのため、テスト勉強を頑張っても、覚えたことをテストで思い出せず良い結果につながりません。文章の読みがたどたどしく、特に漢字が出てくるとつまってしまいます。音読場面では、語尾を上げたり、担任の表情を確認しながら読んだりと自信のない様子がみられます。漢字の書き取りでは、同じ字を何度も書いているうちに違う字に変わってしまうことがあります。
子どもの特性に対応した合理的配慮の実際
1 タブレット型端末の活用
- デジタル教科書をインストールしているタブレット型端末を活用することで、教科書の読みを補助しました。生徒はデジタル教科書を活用して、自ら教科書の漢字にルビを振るようになりました。
- 読めない漢字があったときに、タブレット型端末に手書きすることで、読みを教えるアプリや、プリントをカメラ機能で撮影しその画像から文字を抽出し読み上げるアプリを活用しました。作文を書く課題では、音声入力で思いついたまま箇条書きを行い、文章の切り貼りで文章構成を行うことで、書くことへの負担軽減を図りました。
- 通級による指導においてタブレット型端末の通信機能(SNS)を使って友人と文字によるやり取りをするようにしました。相手に正しく伝わるようにすることや、文字の正しい読み方を意識することで、読むことや書くことへの抵抗感が薄れました。
2 授業での工夫
- 各教科担任が板書量を少なくするとともに、ノートに写す時間を設けました。
- 言葉での説明に加えて図や絵など視覚的な情報も提示したり、用語の意味を具体的に説明したりするなどの配慮を行いました。
3 テストでの工夫
問題用紙を拡大して印刷したものを用意し、ひらがなでも正解としました。また、生徒が黒い下敷きを敷いて課題に取り組むと、裏面の文字などが裏写りせず読みやすいと話したことから、学校はテストでも黒い下敷きを使用することを認めました。
4 専門性のある指導体制の整備
保護者は3〜4か月おきに主治医との定期相談を行っていました。そこで主治医から受けた学習支援等に係る助言を、特別支援学校による巡回相談を活用して開催した支援会議で保護者が情報提供し、専門性のある指導体制の整備に反映させました。
まとめ
通級による指導を受ける際、授業を抜ける場合があります。この事例では、通級による指導について学級担任から周りの生徒に説明が行われました。周りの生徒は、通級による指導に通う生徒に対して「勉強を頑張っている」という認識をもち、理解が進みました。
通級による指導を生徒が利用する場合には、本人との合意形成を丁寧に行うこととあわせて、周りの生徒が通級での学習を前向きに捉えられるように指導することが重要です。
参考になりましたでしょうか?
本コーナーでは、インクルーシブ教育システム構築支援データベース(インクルDB)の事例を紹介しています。
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