特別支援のツボ
完全実施から5年目の特別支援教育。毎月の学級で担任が注意すべきポイントをわかりやすくご紹介します。
【9月】行事の多い2学期の課題を整理して、みんなで力を合わせて乗り越えましょう
全国コーディネーター研究会事務局長黒川 君江
2011/8/19 掲載

 2学期!! 行事予定を見るまでもなく、「さあ!」と、思わず気合の声が出てきませんか? 2学期は、運動会、学習発表会、音楽会、記録会…、学校規模の大きな行事が目白押しです。1年で最も大忙しの学期であり、教師も子どもたちも、なんとも慌ただしく、気持ちの落ち着かない時期ですね。

 実は、この学期、特別支援の必要な子どもたちにとっては、とても大変な時期なのです。その苦しさ、むずかしさを知っていただけたらと思います。

 なぜ、この2学期が、特別支援を必要としている子にとって「大変」なのでしょう?

支援の必要な子にとっては

  • いつもの学級単位の学習から、より大きな集団(学年単位・学校単位)学習になります。「集団」学習が苦手なのに、さらに大きな集団での学習が要求されるわけです。
  • 慣れた教室から、体育館や校庭での学習が増えます。広くて、刺激も多くなります。注意集中に課題のある子やこだわりのある子たちは、学習の困難さが増します。
  • 「学年・学校での完成」ということで目標は高くなり、時間の制限もされています。気持ちや行動の切り替えの難しい子、自分のペースのある子は、調子を崩します。
  • 状況や相手に合わせることがしばしば要求されます。
     多くの新しい学習・場面に遭遇するわけですが、常よりももっている特性やできないことが目立ってしまいます。例えば、運動会のダンス、学芸会の演技など、相手に応じた動きやタイミングが取れなかったり、決められた位置や移動、動作・台詞を覚えるのが難しかったり、演技や予定の変更を受け止めることができなかったりします。
  • 学習条件が変化している上、失敗・トラブルが重なり、気持ちも荒れてきてしまいます。

 こんなことをいくつも抱えているのですが、それを受け止める周囲もいつもと違います。

担任は?

  • 担任も、学年・学校の目標に沿った指導が求められます。練習時間にも制約されます。
  • 個々の対応に気を配れなかったり、気持ちに余裕が持てなくなったりしがちです。

友達は?

  • いつもは分かってくれる友達も自分のことに精一杯になります。
  • 完成度や勝敗を気にすることも多くなっています。

補助者は?

  • 日常から補助してくれる指導員、専科、養護教諭などは、支援しているのに、これまで以上に上手くいかない現実にぶつかります。
  • 周りの目が気になったり、子どもがわがままに見えたりしてきます。

保護者は?

  • 保護者も、大きな学校行事は、わが子が多くの目にさらされるようで緊張しています。
  • トラブルの様子を聞くと、普段以上にプレッシャーに感じます。

 このように、2学期は、特別支援の必要な子を取り巻く人々も余裕がなくなりがちで、子どもの行動に目がいって、気持ちへの配慮ができにくい状況になっていきます。

 9月に入るとき、特別支援の必要な子にとっての2学期は、他の子どもたちの比でなく、たくさんのハードルがあることを、理解しておきましょう。担任だけでなく、学校全体で共通理解しておくことが大事だと思います。今回は、本人と周囲、それぞれの「陥りがちなこと」を客観的に整理してみました。まずは、理解。想定内にしておくことと思います。

 この2学期を上手に過ごした子は自信をもちます。周囲も、乗り越える過程で、他の子ども達が成長し、大人達の協力関係が強くなっていきます。互いがゆとりを生むような工夫・対策を、ぜひお願いしますね!!(次回は乗り越える方向について、具体的に載せる予定です。ぜひ、お読みください。)

黒川 君江くろかわ きみえ

全国コーディネーター研究会事務局長、元東京都文京区立小日向台町小学校通級指導学級主任。文部科学省研究開発学校研究主任(平成13年度〜15年度、特別支援教育)。主な編著書に、『教室から伝えたい特別支援教育』『特別支援教育コーディネーターの1年 小・中学校編』(いずれも明治図書)、『特別支援教育 早わかり』(小学館)などがある。

(担当:木山)
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