特別支援のツボ
完全実施から5年目の特別支援教育。毎月の学級で担任が注意すべきポイントをわかりやすくご紹介します。
【12月】複数の目で、支援のまとめをしてみましょう
全国コーディネーター研究会事務局長黒川 君江
2011/11/18 掲載

 街中にはクリスマスソングが流れます。本屋の入り口には、年賀状のイラスト集が並んでいます。「ああ、今年も終わるんだな…」と、否応なく、実感します。
 4月から、教室の気になる子の支援に取り組んできましたね。あっという間に、あと3学期を残すのみになりました。気ぜわしい思いをいだくこの時期ですが、1学期、2学期の支援のまとめが、残り少ない日々の充実を左右します。

 「試行錯誤?」、「チャレンジ?」、「工夫?」、「模索?」。様々な言葉で表現されますが、振り返ってみると、4〜11月の具体的な実践の足跡が刻まれています。そして、子どもたちの姿も、当初よりは見えてきています。ここから、有効な指導の方向を見出す必要があります。自分なりのメモや記録、(立ててきた方は)個別の指導計画を基にしますが、まとめを、『ひとりの作業としないこと』がポイントです。誰かと、何人かと話し合っていく方が、見えていなかったことが整理されます。

 まとめていく視点の一例を挙げてみます。

効果のあった支援、繰り返してはいけないと思った対応

 ここは、主要な点です。些細なことも、出し合ってみましょう。お互いに、頭の中で雑然としていたにしても、話してみる、表現していく、聞いてみることで見えてくることがあります。構えない、柔軟な気持ちが大事です。詰まってきたら、次の項目に行きましょう。

好きなこと、得意なこと、興味・関心のあること

 子どもたちと繋がっていく大事な情報です。案外、こんなことを知り得ていると、親しみが生まれ、指導が円滑にいくものです。他の先生たちと話し合っていくと、「へえ〜」とヒントをいただくがしばしばです。

「地雷」となること

 反対に、「あんなことを言うから」など、トラブルを引き起こしがちな要因があります。マイナス因子を減らしていくことも大切な視点です。「そう、そう、そういえば…」。なんとなく感じていたことを明確にします。

友だちとの相性

 上手くいくタイプ、苦手なタイプ、どの子にもあるものです。環境要因に左右されやすい特別支援の必要な子たちには、十二分に配慮したいところです。この情報は、席替えのとき、専科の授業のとき、クラス替えのとき、貴重な資料となります。

休み時間の過ごし方

 目が行き届かないところがあるものです。主事さん、事務の方、教頭先生など、違う立場の方からの声、見方も聞いておくと、役立ちます。話を聞き取りながら、支援の仕方、声のかけ方などの意見交換ができることも多いです。

保護者とのつながり

 担任と保護者との関係・つながりはどのように変わってきたのか、できるだけ簡略にまとめてみます。「こんな気持ちなんだなと分かった」「ここが大変だと感じた」「こういう言い方をした方がいい」など、前向きな言い方・書き方に気をつけてみます。

連携できた機関

 学校以外で、助けられた関係機関(医療、教育センター、通級…)、役に立った講習会や講演、参考になった本なども記録しておく、聞いてみると、課題が整理されていきます。

行事等への配慮

 【9月】【10月】に書いたように、大きな行事は失敗感を大きくします。早くから、予想を立てて、支援の工夫、子どもたちの見通し・心構え、事前指導など、考えられることは話し合ってみましょう。

 自分の経験を客観的に見つめていくには、複数の目が必要です。本来、校内委員会が機能していくべきところでしょうが、今、誰と、どんな機会(会)で話し合えるのか、探してみてください。

 寒くなりました。風邪をひかないでくださいね。リラックスした話し合いの場がもてますように!!

黒川 君江くろかわ きみえ

全国コーディネーター研究会事務局長、NPO法人発達障害支援ネット「YELL」理事長、元東京都文京区立小日向台町小学校通級指導学級主任。文部科学省研究開発学校研究主任(平成13年度〜15年度、特別支援教育)。主な編著書に、『教室から伝えたい特別支援教育』『特別支援教育コーディネーターの1年 小・中学校編』(いずれも明治図書)、『特別支援教育 早わかり』(小学館)などがある。

(担当:木山)
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