3年生の授業で、指導事項ウの「登場人物の気持ちの変化」を読むことを主なねらいにして、「場面ごとに読み取って感想を書こう」という言語活動にしてみたのですが、単元の導入時に子供たちに示しても、全然のってきません…。
まず、子供の側から言語活動を見直してみましょう。
「場面ごとに読み取って感想を書こう」という言語活動は、クラスの子供たちにとって魅力的で必然性のあるものになっていますか? もしも子供たちにとって、こうした観点から改善の余地があるなら、もっとチャレンジしてみたい言語活動に変えてみることも大切です。
例えば、「紹介したい物語について、感想を書いてそのおもしろさを説明する」といった言語活動にしてみてもよいでしょう。どんな作品のどの場面や叙述に着目して感想を持つのか、なぜ感想を書くのか、といったことがはっきりして、子供にとって魅力的な言語活動になることでしょう。より具体的な言語活動の形式については、子供たちと話し合って決めてもよいですね。
さっそく子供たちと話し合って、言語活動を見直し、「紹介したい物語について、感想をリーフレットにまとめて説明する」という言語活動に変え、第二次の教科書での学習で場面ごとに読み取らせているのですが、なかなか「登場人物の気持ちの変化」を読むというねらいに結び付きません…。
今度は言語活動を、指導のねらいから見直してみましょう。ここでは、「登場人物の気持ちの変化」を読む能力を付けることがねらいでしたね。
まず、言語活動の特徴をもう一度確かめてみましょう。「感想をリーフレットにまとめて説明する」といった言語活動の場合、指導のねらいに応じて、子供が感想を持つ着眼点を明確にすることと、リーフレットの形式を吟味することが必要です。
「何でもいいから感想を持とう」、「リーフレットを楽しくきれいに仕上げよう」ということが国語科における言語活動ではありません。指導のねらいにふさわしい言語活動となるよう「登場人物の気持ちの変化」をとらえて感想を書いたり、それがはっきりと表れるリーフレット形式を選んだりすることが大切です。
具体例としては、図(「変身ボックス」)のような言語活動ツールの開発が行われています。これを見ると、気持ちの変化を確実にとらえられるようになっていることが分かるでしょう。残りの側面に、この変化を基に感想を書くパーツを位置付けるなどといった工夫もできますね。
![図](/db/eduzine/tangengo/20140564_1.png)
もう一つは、「場面ごとに読む」という指導の見直しです。この指導は、当該場面の叙述を精査するのには適していますが、どの場面のどの叙述を読むのかを子供自身が判断して読んだり、場面相互の関係や変化などを読んだりする際には、必ずしも最適の方法とは言えません。
例えば、全文掲示などを活用すると、作品全体を俯瞰した読みを行いやすくなりますので、ぜひチャレンジしてみてください。(詳細は、『単元を貫く言語活動を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド 3・4年』を参照下さい。)
全文掲示も使い、変身ボックス型のリーフレットに、気持ちの変化を観点にした感想を書いて説明することにしました! でも…。本時の学習課題を、「主人公の気持ちの変化を読み取ってまとめよう」と設定し「気持ちの変化が分かるところにサイドラインを引こう」という学習活動を中心に進めているのですが、授業で活躍できるのはごく限られた読む力のある子だけになりがちです…。
本時の学習課題は、単元を貫く言語活動を結び付くものとなっていますか?
「主人公の気持ちの変化を読み取ってまとめよう」だけでは、「紹介したい物語について、感想をリーフレットにまとめて説明する」という言語活動と無関係な読み取りになってしまいがちです。そのため、子供たちが本時になぜその学習活動を行うかを判断しにくくなってしまうのです。
また、「気持ちの変化が分かるところにサイドラインを引こう」と指示しても、主人公の揺れ動く心情は、作品全体を通して描かれていることが多いものですから、ほぼ全文にサイドラインを引くような機械的な作業になってしまいかねません。
こうした状況を改善するためには、まず本時の学習課題を、単元を貫く言語活動とリンクしたものとすることが有効です。例えば、「紹介したい物語について、感想をリーフレットにまとめて説明することに向けて、自分が取り上げて説明したい(教科書教材の)主人公の気持ちの変化をはっきりさせよう」などと工夫してみることが考えられます。
また、教科書教材を読む第二次の本時においても、教材で学んだ読みの力を自分の選んだ本の読みに適用する時間を位置付ける「入れ子構造」や、その発展型である「ABワンセット方式」を工夫すると、さらに効果が高まります。(詳細は、『単元を貫く言語活動を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド』を参照下さい。)
ここをチェック!授業改善のためのポイント
単元を貫く言語活動を授業に位置付けるには、次のポイントに留意しましょう。
- 実践を通して、言語活動の適否を再確認しているか?
- 第二次の各時間の学習課題は、単元を貫く言語活動とリンクしたものとなっているか?
- 第二次の各時間も、自分の選んだ本の読みにつながるよう指導過程を工夫しているか?
![](/common/img/banner/merumaga_w655h70.png)
なぜ「リーフレット」などと、余計に時間を取る活動をしないといけないのでしょうか。
手間も時間も削減することで、反復練習の時間を確保し、そうすることでこそ学力が身に着くのではないでしょうか。
「紙芝居」とか「ペープサート」とか、もううんざりです。
児童は「読まされているだけ」だから、教科書で学習した物語は理解できても、授業が終わってから児童自ら「次の本」に手が伸びないのです。
水戸部先生の言う「リーフレット云々」は、「指導事項に応じた身に付けさせたい力」と「言語活動の特徴」がリンクしていることが大事ですよ、そして目的と必要性、「だれかに伝える」という相手意識などがあるかないかで、肝心の「読みの精度」が変わってきますよ、というお話だと思います。
リーフレット作品そのものが意味をもつのではなく、リーフレットを作るために、児童が主体的に物語の叙述に着目したという過程にこそ意味があるのです。
本当に「うんざり」しているのは、自分の授業を受けている子ども達かもしれないとお互い自戒して、頑張りましょうね。
一問一答のならない、説明文の指導はどうあればよいですか