間もなく年度末です。でも…、教材文を場面ごとに読み取った上で言語活動に時間をかけていたら、授業が遅れて教科書の学習が終わりそうにありません…。どうしたらいいのでしょうか。
それは焦りますね。なぜ遅れてしまったのか、理由ははっきりしていますね。単に場面ごとに読み取って時間をかけた上、さらにそれとは別に言語活動をしてしまうから時間がかかるのです。文章は場面ごとに時間をかけて読めば力が付くわけではありません。どの文章のどの叙述に着目して読むかを、指導のねらいに即して子供自身が意識して読めるようにする必要があるのです。そのためにこそ、単元を貫く言語活動を位置付けて、子供自身が自ら本に手を伸ばして主体的に読めるようにする必要があるのでしたね。さっそくどうすればいいか整理してみましょう。これから留意すべきポイントは次の通りです。
【ポイント1】その単元で指導する指導事項をよく確認して、指導の重点が何なのかを把握する。
評価もしなければいけないし、とても指導事項を見る余裕なんて…と思ったりするかもしれません。しかし、評価は目標に準拠して行うものです。つまり指導事項がどのくらい身に付いたかを把握するものですから、教材の内容が理解できたかといった漠然としたことではなく、指導事項に基づいて明確に評価しなければなりません。逆に言えば、学習活動すべてを網羅的に評価するのではないので、指導も重点化することができるのです。
【ポイント2】これまでに子供たちが経験してきた言語活動をうまく生かして位置付ける。
目新しい言語活動ばかりを行う必要はありません。これまでに子供たちが経験してきて使いこなせるようになった言語活動から、指導のねらいに合うコンパクトなものを選んで位置付けてみましょう。
押さえなければいけないポイントがよく分かりました。では、具体的には国語の授業でどのようなことに気を付けていけばよいのでしょう。
4年生の物語文の学習を例に考えてみましょう。例えば指導事項として、
ウ 場面の移り変わりに注意しながら、登場人物の性格や気持ちの変化、情景などについて、叙述を基に想像して読むこと。
を取り上げて指導する場合を考えてみましょう。確かに、この指導事項を1つの単元ですべて指導するには時間がかかりますが、これまでも3年生や4年生の前単元までに、何度も物語文の学習をしてきましたね。その学習の評価に基づいて、クラスの子供たちにまだ十分身に付いていない読む能力を重点的に指導するのです。
例えばこの指導事項の中でも「場面の移り変わり」を主体的にとらえて読めるようにすることが特に必要だと判断したなら、場面ごとに読み取ればよいのではなく、子供自身が複数場面を通して読み、その移り変わりに気付くことができるようにする必要があります。その際、全文掲示などが役に立つのでしたね。
続いて、言語活動の選定を考えてみましょう。やみくもに目新しいことをすればよいのではありません。例えばこれまで、自分の好きな物語の「登場人物の性格」や「登場人物の気持ちの変化」を説明する本のリーフレットなどの言語活動ツールでの学習を繰り返してきた子供たちなら、心に残る「場面の移り変わり」をリーフレットで説明するといった言語活動も、時間をかけずにできるはずです。
具体例については、『単元を貫く言語活動のすべてが分かる小学校!国語科授業&評価パーフェクトガイド』を是非参照ください。
学年のまとめをしっかりと行って、子供たちに力を付けて進級できるようにします! これまで、単元を貫く言語活動の授業づくりにチャレンジしてきましたが、次年度につなげるために、どのようなことに気を付ければいいでしょう。
上記のような重点化は、これまで継続的に単元を貫く言語活動を位置付けて授業づくりをしてきたからこそ可能なことなのです。
例えば3年生までに、ほとんど言語活動を行わせず、細かい読み取りだけをさせたなら、4年生になって、急に本の紹介リーフレットを作ろうといっても、戸惑いが大きくて時間ばかりかかってしまうかもしれません。でも反対に、低学年のうちから様々な本を選んで読んで大好きなところを紹介するといった言語活動を、ねらいに応じて確実に行ってきたのなら、子供たちは見通しをもってどんどん取り組んでいけるのです。
ですから、次年度に向けては、当該学年で取り組んできた言語活動を、先生も子供たちも、もう一度振り返ってみるとよいでしょう。できれば、これまでの学習成果であるリーフレットやボックスなどのツールをもう一度手に取って、学習を振り返ることが理想的です。そして、どの言語活動でどんなことができたか、その際のポイントは何だったかを指導のねらいに応じて整理することで、次の学年でより発展的な言語活動を行う際の基盤となる国語の能力をしっかり定着させることができるのです。
子供たちが1年間に取り組んだ言語活動を振り返り、「自分はこんなことができるようになった」「国語がもっと好きになった」といったことを実感できたら、これほどうれしいことはありませんね。
ここをチェック!授業改善のためのポイント
単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりについて、年度末の仕上げをしっかりと行うためには、次のポイントに留意しましょう。
- 当該学年で取り組んできた単元を貫く言語活動を振り返り、「何ができるようになったか」「どのような力が身に付いたか」を確かめましたか。
- 更に身に付けたい能力を重点化・明確化して、年度末に向けて単元のねらいや見通しをはっきりもちましたか。
- 既習の単元を貫く言語活動を効果的に活用して、年度内に当該学年で身に付けるべき国語の能力を確実に身に付けられるように授業を工夫しましたか。
そうすることで我々の実践する毎回の授業の精度、言語活動の設定の意味、振り返りや評価もはっきりしてくると感じている今日この頃です。
指導要領の改訂もありますね。主体的・協働的に学び、課題解決していく力がますます求められていくようです。それを意識しながら、年度内の最後の物語単元に挑戦しているところです。
近いことを日々実践しているつもりだけれど、結局受験や学力テストみたいな試験とかい離しているような気がします。本当に、この方法で受験の点数もとれるような国語力が身につくのか不安です。