前回の質問で、グループ学習のコツが分かりました。もっと効果的に交流することができるような手立てとして、話型の指導を取り入れたいのですが、話型とはどのようなものか、改めて教えて下さい。
話型とは、子供たちが話し合い(交流)の学習を進めるための手掛かりとして、いくつかの典型的な文型などを提示する指導の手立てです。これまでも全国の様々な地域で話型の指導が取り入れられてきました。地域によって「わけい」と呼んだり、「わがた」と呼んだりと、名称も様々ですし、具体的な話型も多様に用いられています。
ただ、実践では共通の悩みがあるようです。それは、せっかく教室に掲示しても、子供たちがあまり活用できていないケースが見られるということです。
実は、教室の前面に、「わたしは…だと思います。」「理由は〜だからです。」などの話型を短冊に書いて掲示しているのですが、あまり活用されなくて悩んでいました。どうすれば子供たちが活用しやすい話型を提示できるのですか。
話型が活用されにくいという現状があるとすれば、その理由としては、例えば次のようなことが考えられるかもしれません。
- 話型の数が少なく、子供が話そうと思うものに合ったものが見つかりにくい。
- 話型が、書き言葉に近い形で提示されているため、話し言葉として用いにくい。
- 話型が、子供にとっては変えてはいけない型としてとらえられがちで、発話の中で柔軟に加工修正して使うことが難しい。
「わたしは…だと思います。」「理由は〜だからです。」と考えを論理的に述べることができるようにする指導はとても大切ですが、子供たちだけでなく私たち自身も、常に結論やその根拠を明確にもって行動しているとは限りません。むしろ、「AかBか迷っている」といった状況が多分にあることでしょう。だからこそ、交流する意義があるのでしたね。
学習の場においても、子供が「Aかな、Bかな、ちょっと自信がないな」と迷ってしまうことがあるでしょう。そして、「わたしは…だと思います。」「理由は〜だからです。」とはっきり説明することができず、その結果発言しない、という子供たちも多く見られるのではないでしょうか。
話型の提示に当たっては、試行錯誤したり、行きつ戻りつしたりする、子供の思考の実態に即して、具体的なものを提示できるようにしてみることが効果的です。また例えば、話型を教師側から提示するだけではなく、子供の発話から取り上げてみてはどうでしょう。話型を、変えてはいけない一定の型としてではなく、様々に加工修正して活用できるものとしてとらえさせることで、子供たちも使いやすくなるでしょう。
話型を活用した指導のポイントが分かりました。こうした点に気を付けて指導を工夫すれば、主体的で協働的な学びが実現できるのですね!
話型の指導が効果を発揮するためには、いくつかの大前提があります。子供たちが話し合う目的も必然性もない状況では、話型の提示の仕方だけをいくら工夫しても学習指導の改善には結び付きにくいでしょう。
まず、子供にとって話し合いたい、交流したいという目的を明確にもつことができるような課題の解決に向けて学ぶ場が重要です。例えば、「自分の心に響く作品を推薦するために、作者固有の優れた叙述に着目して、推薦理由をよりはっきりさせたい。だから同じ作者の作品を読んだ友達同士で交流する。」といった意識を重視するのです。
また、一口に話型といっても、学級全体で話し合う場面とグループで話し合う場面、読書会で交流する場合と科学読み物を読んで得た情報を交流する場合とでは、用いる話型や語彙が異なってきます。
多様な言語活動を通して、こうした指導を具体化していくことが大切になります。その手掛かりとして、例えば次のような文献を参考にしてみて下さい。
(『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』)
ここをチェック!授業改善のためのポイント
単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりに向けて、ねらいにあった話型を効果的に取り入れた指導を実現させるには、次のポイントに留意しましょう。
- 話し合う目的や必然性のある、課題解決の過程となる単元を貫く言語活動を明確に位置付けていますか。
- 話型は、子供たちの思考過程や位置付けた言語活動の特徴に応じて、具体的かつ多様に提示していますか。
- 話型は、子供たち自身が柔軟に加工修正して活用できるものとして提示していますか。
主体的で協働的な学びの実現には、話型の上手な活用が一つのポイントになると考えます。今回の水戸部先生の御指摘は、ベテランの先生にとっては自己の指導の振り返りと改善の観点として、若い先生方には身に付けていただきたい基本的な指導の要諦として受け止めました。 掲示した話型の有効活用を目指したいと考えます。
「この叙述に心惹かれるんだけど、うまく理由が書けないんだ」等の自分の課題を解決するために、グループ交流によって他者の意見やアドバイスを「引き出す」という主体的な姿勢をどう培うか。今の子どもは恥ずかしがったりしますからね。だからこそ「友達に頼ったり、助けてもらったりしていいんだ」という相互扶助というか互恵的な関係が良しとされるような「普段からの学級づくり」が、実は肝なのかも。
それがあって、話型はもとより、指導者が考え抜いた「場の設定」が十分に活きてくるんでしょうね。