- 英語教育UD 教材・教具
- 特別支援教育
今回のねらい
小学校で初めて学ぶ外国語。それもアルファベットは日頃商品のパッケージやロゴなどで目にすることも多いですね。アルファベットは26文字だから簡単では?と思われてしまうのですが、文字習得でつまずくことは意外と多いのです。小学校では「4線を使うこと」がお決まりのようになっていますが、いきなり書かせて混乱することはよくあることです。もともと4線は補助としての役割なのに、「きちんと4線に書けないと間違い!」と漢字のような正確さを求めることで文字を書くことが嫌いになってしまうことも。今回は、「書く練習」に焦点をあてて、小学校低学年の児童が書字で混乱しやすいポイントと、指導のヒントを2つご紹介します。
運筆を意識しよう
- 書名
- Handwriting Practice: 1
- 著者
- Carol Matchett
- 出版社
- Schofield & Sims Ltd
子どもが書字を身につけるためには何が大切でしょうか。
正確さはもちろん大切ですが、正確に書けるようになるためには
1.文字を正しく見て認識できる
2.鉛筆を正しく持ち、適切な力加減で思った方向に動かすことができる
などの基本的な書字のスキルが必要です。また、「読める」と「書ける」は異なります。音を文字の形を結びつけるためにも、目だけで形を確認するのではなく、書くなどの「動作」によって、運動感覚としても認識していくことで文字の定着に結びつけることができます。
本書は、動きが似ている文字をグループごとに練習することができるワークブックです。指導のポイントは「容易なもの、シンプルなもの」から「より複雑なもの」へのステップを辿ること。かな文字でも、最初は「し」や「つ」など一筆で書ける、単純な文字から始めるように、英語圏ではアルファベットもlやiなどの形の似た、シンプルなものから練習します。本書はstarting point(書き始める点)がドットでわかりやすく示されているほか、“Start at the top. Come down to the line”(l, t, i)、“Go over the top and round”(c, o, a)のように動きを声に出しながら文字を書くような吹き出しの指示もあります。同書のはじめに書かれていますが一度に文字をたくさん覚えさせようとせず「練習は、少しずつ、繰り返しすること」が大切です。
4線の前に2線から―小文字指導
小学校や中学校では当たり前のように使われている4線ですが、大人になったら使いませんね。4線は何のために使われているのか、その目的を考えて指導していますか。「当然使うものだ」と思って、「線からはみ出したらペケ」といった指導をしていませんか。ありがちなのが、「今日はこの文字を練習したよ!さあ、線のここにこういう風に書くよ」と、新しい文字の形を教えてすぐに、4線を使わせていませんか。子どもにとっては、
1.文字の形を覚える
2.4線での位置を覚える
という二重のタスクが課されることになり、負担がぐっと高まります。子どもたちのつまずきを回避する観点からも、「なぜ4線を使うのか」「どのように使えばいいのか」を見直してみましょう。
もともと4線は、アルファベットの大文字・小文字を書くときに、文字の大小と長さのバランスを取るために工夫された「補助線」としての役割があります。決して「なくてはならない」ものではありません。大文字はすべて第1線から第3線の間に書きますが、小文字の主要パーツは第2線と第3線の間に書きます。大文字と小文字を同時に指導することはないと思いますが、いずれの文字も、「まず2線」あればバランスを取るのに十分です。
大文字では、2線を使って「天井」(第1線)と「床」(基線)を示しましょう。全ての文字が、天井と床のどちらにもタッチするように書くように意識させるので十分です。
小文字の場合は、まず基線だけを使い、文字の形をしっかり認識させることに集中させましょう。たとえば、次のように指導します。
1.床にお尻がついている文字はどれですか。
2.床を突き抜けて地中に潜ってしまっている文字がありますね。しっかり下に線を延ばしましょう。
次に、第2線を足して、2線と基線のスペースに書くことを意識させましょう。
3.2線の上に突き抜ける文字はどれでしょう。
1から3の指導でそれぞれ以下の文字が書けるようになります。
1.基線上の文字が書ける(a, c, e, i m , oなど)
2.基線より下に突き抜ける文字を書ける(g, j, p, qなど)
3.第2線より上に突き抜ける文字が書ける(f, h, k l )
市販の4線ノートは、基線と2線の間のスペースが十分でなく、ぎゅうぎゅうに詰まった文字を書かざるを得ないようなものもあります。これは小学生には好ましくありません。国語の漢字練習帳でも、マスに大きく書く練習をするように、文字を大きく書くスペースを与えることはとても大切です。市販のものだから、配布されたものだから、とこだわらず、子どもにとって「わかりやすい」「学びやすい」ためには何が必要かを考え、工夫することが一番大切です。手持ちになければ、先生が線を引けばいいことです。決して固定概念にとらわれることなく、目の前の子どもに合わせて文字指導を進めましょう。