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今回のねらい
大人にとっての「文字」は、子どもたちにとっては最初、ただの「記号」です。わたしのイメージでは、文字は音声という色がついている、さまざまな形のブロックのようなものです。言語習得の過程では、文字の形を正しく見分け、覚え、その形に対応する音声を学んでいきます。そして、耳で慣れ親しんだ語がそれらの記号(=文字)で書き表せることや、文字の組み合わせによって様々な「語」が作られることを学びます。今回は、文字の形を覚えることが難しい子どもへのアルファベット指導のヒントについてお話しします。なかでも(1)線と線の位置関係が捉えにくい、(2)平面の図形が捉えにくい、(3)音声と結びつけにくい、といったケースで役に立つ教材を紹介します。
文字の構成を意識させよう
大きなパーツを組み合わせてアルファベットの大文字と小文字を作ることができます。
たとえばグループに1枚アルファベットカードを与え、「よーいドン!」でパーツの山からカードにあるパーツを探し、それを組み立てて文字にするスピードを競うゲームをすることができます。個別指導であれば「どういう線が、どのようにつながっているか」を口頭で説明する時間を取ります。
たとえば、大文字のBは、「長い縦棒、右側に小さい山が2つ」と説明できます。この説明は、子どもが自分で考えて作ると良いでしょう。左右や大小を取り違えて混乱しやすい子どもには、文字を書かせる前の遊びとして使えます。
手の感覚を刺激しよう
- 教具
- 粘土、ブロック、サンドペーパーなど
子どもによって、覚えにくいアルファベットの文字は異なります。
いろんな指導をやってみてもAくんは小文字のnがどうしても思い出せない、Bさんはuがいつも思い出せない、というように苦手な特定の文字が残り、毎回の繰り返しが増えることがあります。そうすると子どもも失敗が増えて悲しい気持ちになってしまうため、これまでと同じ練習方法を続けるよりも複数の指導方法を試すと新しい刺激になります。
たとえば粘土やブロックで文字を作るのは、平面の図形が苦手な子ども、注意集中に弱さのある子どもにはもってこいです。粘土に色をつけたり、好きな色のブロックを使うことで集中して取り組むことができます。また、文字を書く際にどこからスタートして、どの方向に指を動かすかと良いかという流れを身につけるには、塩が入った箱の中に指で文字を書かせて触感を刺激したり(上のイラストを参照)、ざらざらするサンドペーパーの上を指でなぞったり、あるいはその上に紙を置いて鉛筆で書かせたりするといつもとは違う感覚で楽しめます。
すべての文字について行う必要はありませんが、特に苦手な文字が残ったときや、時間をかけて取り組みたい文字があるときに良い方法です。
文字の形状が苦手な子にとって、学習のモチベーションを失わせないために大切なのは「楽しむこと」です。どのような大きさにするか、何色にするか、子どもが自分で選び、創造したものを褒め、大切にしましょう。
指導者の肯定的な姿勢や言葉が、子どもの文字への態度や愛着を育てます。
音声と一緒に動きを練習しよう
iWriteWordsはネイティブの幼児から1年生向けのアルファベットアプリ(有料)です。点と点をつなぐアプローチで文字をなぞる練習ができます。文字の名前(エイ、ビー、シー)をネイティブ音声で練習することができます。
このアプリの気に入っているところは、最初からドット(点)が見えていてそれをなぞるのではなく、目がドットを追いかけるように順番にドットが出てくるところです。最初は、単文字から始めると良いでしょう。
すべての指示が英語なので、インストールしてからの設定を紹介します。iPadかiPhoneの「設定」をひらき、まずHANDWRITING(書き練習)の設定をします。Difficulty(難易度)、文字のスタイル、左利き用の設定、大文字を使うかどうかを選びます。次にAPPEARANCE(外観)を設定します。High Contrast Themeを選ぶと、背景と文字のコントラストがよりはっきりした組み合わせになります(青背景で黄色文字など)。Hide Mr. Crabを選ぶと、なぞるときに押さえるカニのキャラクターが消えてシンプルになります。Letter Block Rotationを選ぶと数字がクルクル回らず止まります。シンプルさを好む子、色々動いている方が楽しめる子など、その子に合わせて設定して下さい。
LETTER FILTERでは、練習する文字を選ぶことができます。これも、今週はこの文字だけ、など計画的に進める場合に良いでしょう。SOUNDでは、読み上げの声を男性・女性/米語、英国、スペイン語、フランス語などから選べます。PLAYBACKでShuffleをオンにしておくと、アルファベット順ではなくランダムに文字が現れます。最後に、SPINNING HOLEをHole Suction Forceにしておくと、書いた文字が自動的に吸い込まれて次の文字にいけるので、これは設定しておくと良いでしょう(通常は、自分で文字をくるくる回しHoleにもっていく)。
子ども向けにさまざまなアルファベットや単語のアプリがあるので、その子にあったアプリを試していくのも良いでしょう。音声や動きがあるのがICTの何よりの強みです。
*URLや教材の情報は掲載時点でのものになります。