- 山ちゃんのボディパ!
- 特別支援教育
本日の動画
言葉の壁を越えたボディパーカッション教育
聴覚障害の子どもたちが演奏するボディパーカッション
※YouTubeの動画にリンクしています。
いかがでしたか。ここで活動している子どもたちは、みんな聴覚に障害があるのですが、そんなことは全く感じさせない、生き生きと楽しく活動している様子が伝わったのではと思います。音がほとんど聞こえない子どもたちが、どうやってリズムにのってあのようなすばらしい演奏ができるのだろうと驚かれた方もいるかもしれません。
活動10年目に浮かんだ素朴な疑問
今から15年ほど前の1997年の冬、私が「ボディパーカッション教育」に取り組み始めて10年が過ぎていました。ボディパーカッションとは、体全体(ボディ…body)の様々な所を打楽器(パーカッション…percussion)のようにたたいて音を出し、リズムアンサンブルをつくり上げる活動です。私がクラスづくりの一環として発案してからずっと活動を続けていましたが、今まで勤務していた小学校はもちろん、当時、勤務2年目であった養護学校の子どもたちも、ボディパーカッション教育を通した音楽活動を大変楽しんでくれていました。しかしこの時、ふと「聴覚に障害がある子どもは、音楽を本当に楽しめるのだろうか?」という素朴な疑問が浮かんだのです。
真剣にバンド演奏する聾学校の生徒たち
数日後、思い切って同じ地域の聾学校(現久留米聴覚特別支援学校)へ電話をかけ、「音楽の授業は行われているのでしょうか?」と聞いてみました。今から考えると、大変失礼な質問です。しかし“音がほとんど聞こえないのに、音楽の授業が成立するのだろうか?”と不思議に思ったのです。その時、電話に出られた聾学校の先生は「はい、毎週水曜日に行っています」と返事をされたので、早速数日後に中学部の音楽の授業を見せて頂くことになりました。
音楽室に入ると、7人の生徒たちが、ギターやドラム等、各パートに別れて、先生の指揮を見ながら演奏を行っています。決して上手とは言えない演奏でしたが、指揮をする先生の手の動きを真剣に見ながら、楽譜に合わせて懸命に演奏しています。その様子に思わず感動し、授業後、指導された先生に次のような質問をしました。
「子どもたちは、自分たちが演奏している音は聞こえていますか?」
驚いたことに、聾学校の先生は次のように答えました。
「ほとんど聞こえていないと思います。補聴器を付けている生徒も楽器の音として聞こえているのではなく、ザーとかビーというような音として聞こえているようです」
この答えを聞いた時、“聴覚障害の子どもは、音が聞こえなければ、音の振動を感じ、身振り手振りなどの視覚から音楽を感じるのでは”と思いました。
そして、ボディパーカッション教育であれば、聴覚障害の子どもたちにとって自分の体をたたく振動や刺激を「音」として感じ取り、お互いの演奏を視覚で確認しながらアンサンブル(合奏)ができる”と考えました。そして、早速、聾学校の校長先生へ「音楽の授業でボディパーカッションを取り組ませて下さい」とお願いしました。
ボディパーカッションなら聴覚障害児も音楽を楽しめる!
当時の校長先生は聾学校一筋30数年の聾教育実践家の方で、ボディパーカッション教育に大変興味を示してくださり、試しに数回実践してみることになりました。そして、最初に取り組んだのがオリジナル曲「手拍子の花束」です。
実際に指導してみると、生徒同士は自分の体をたたくのですから、音の強弱もリズムも分かります。さらには、人の動きも見ながら楽しそうに演奏しています。音が聞こえなくても、相手を見て確認し、振動を感じ、合奏することができています。音が聞こえなくても音楽は楽しめることを実感し、「すべての子どもたちがボディパーカッション教育を通してコミュニケーションできる!」と確信しました。まさに、ボディパーカッション教育を広めていく使命と役割を頂いた瞬間でした。
ボディパーカッション教育のキーワードは「すべての子どもたちが楽しくコミュニケーションをとれる」です。この連載では、特別支援の必要な子どもたちも健常児も、みんなが一緒に楽しめる活動をご紹介していきます。
それでは最後に、本日の動画で演奏していた子どもたちの自己紹介の様子をご覧下さい(2009年の演奏当時のものです)。
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