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動画1 東京都葛飾区立南綾瀬小学校の公開授業の冒頭
動画2 33年ぶりの同窓会で行ったリズムスクールの冒頭
クラスの雰囲気を一気に変えるオリジナルの合言葉を決めよう!
冒頭でご紹介した動画。これは、学級活動や朝の会、帰りの会で、リズム遊びやボディパーカッションを使ったコーナーを設けるときに、私が必ず導入で行うこだわりの儀式です。30数年前にボディパーカッションの活動を始めて以来、ずっとこの儀式は続いています。全員が一緒に行うリズミカルな掛け声です。
「たったそれだけで子どもが変わるの?」と思われるかもしれませんが、本当に変わるのです! 現在は、大学の授業や教師対象の講座が多いのですが、いきなり小学校、幼稚園、高校・中学校に行って、いわゆる「飛び込み授業」を行うときも、最初の約3分でこの儀式を行います。合言葉は「山ちゃんの楽しいリズムスクール」。方法は簡単です。それでは早速、みなさんで一緒に再現してみましょう!
状況再現、スタート!
「今日は山田先生が来られました。みなさんに楽しいリズムを使ってボディパーカッションを教えてくれます」と担当の先生が私のことを紹介してくれます。
一方の子どもたちは「いったいどんな先生だろう?」「このおじさん何しに来たの?」と興味津々になっています。
私はネクタイをして背広を着ている場合もありますが、そんなときは硬いイメージなので、マイナスからのスタートになります!(笑)
すぐに私は子どもたちに伝えます。「みなさんにお願いがあります。私の名前をおぼえてください。山田俊之といいます」。私は黒板に「山田俊之(やまだとしゆき)」と書いて、横に簡単な似顔絵を描きます。「私の名前は山田です。今からリズムを使って、ボディパーカッションをみなさんと楽しみたいと思います」と伝えます。(ここまでで1分)
すぐにクラス全体を左右半分に分けるジェスチャーをしながら、「先生がリズムを打ったら、こちら(左半分)が『山ちゃん』、こちら(右半分)が『楽しい』と言ってください。そして、その後にみんなで『リズムスクール』と言いましょう!」と言っていきなり始めます。(ここまで2分)
「タンタカタンタカ〜タカタン」といきなり打楽器やひざを叩いたら、みんなで「山ちゃんの(右半分)/楽しい(左半分)/リズムスクール(全員)」と言って、最後は手を大きく広げて万歳をしてください」と指示を出します。子どもたちもびっくりしますが、これがとても雰囲気を盛り上げる重要なポイントです。(ここまで3分)
子どもたちも、最初は上手くできませんが、「今のは65点かな!」(1回目)「80点が合格だよ、がんばって!」というと、ノリのよい子どもたちががんばり始めます。そして、1、2回続けていくと、雰囲気が一気に変わってきます。
これだけですが、わずか5分の間に子どもたちの雰囲気が一気に軽くなり、楽しい雰囲気ができ上がります。みなさんもぜひお試しください。方法は簡単です。高島という苗字だったら「高ちゃんの、楽しい、リズムスクール!」、はるかさんだったら「ハルちゃんの、楽しい、リズムスクール!」また、漢字の学習でしたら「漢字スクール!」としてみてください。子どもたちは必ず変わります。
ボディパーカッション教育の始まり「先生A男が暴れています!」
さて、冒頭にも出てきた「ボディパーカッション」について、ここでご紹介しましょう。
ボディパーカッションは、手拍子や足ぶみ、ひざやおなか、おしり等をたたいて、グループでリズムアンサンブルをする活動です。
30数年前、私が当時、学級担任で小学校に勤務していたころのことです。
「先生早くきてください! A男が暴れています!」
女の子が金切り声を上げ、叫んで職員室に入ってきました。始業式から10日間は、毎日のようにクラスの子どもたちが私を呼びにきました。あわてて2階の教室まで全速力でいきます。だれか怪我をしていないだろうか、教室の扉を開けるまでは不安で一杯になります。
ドアを開けて教室を見渡すと、A男が教室のほぼ中央にいて、その回りは誰もいません。A男を中心に同心円を描くように遠巻きにみんなが見ています。一人の女の子が教室の隅で泣いており、A男は肩で息をしてまだ興奮状態が続いています。「どうした!」と私が聞くと、A男は一点を見つめたまま目に涙を溜めて何も答えません。周りの子どもたちに聞いてみると、A男がいつものように急に怒りだして、自分の机や椅子を蹴って倒したりし始めたとのことでした。
興奮状態から落ち着くのをみて、A男に「どうしたんだ」と聞きます。A男「B子ちゃんが消しゴムを貸してくれなかった」。泣いているB子ちゃんに聞くと「A男の言ったことがよく聞こえなかった」と答えました。
このA男が、クラスの一員として所属感や仲間意識が持てるよい方法はないかと考案したのが、ボディパーカッションです。A男と他の子どもたちの人間関係をよくし、A男自身の自尊感情も高めたいという思いで、簡単にできる身体をつかったリズム遊びやリズムアンサンブルを工夫し、「山ちゃんの楽しいリズムスクール」というコーナーを始めました。すると、予想以上に子どもたちも喜び、次第にクラスみんなが一体感や達成感を味わうことのできるパフォーマンスとなりました。これがボディパーカッション教育の始まりです。
それから30数年が経ち、このときのクラスでの同窓会があった際に、30数年ぶりに「山ちゃんのリズムスクール」を行ったときの映像が、冒頭の動画2になります。
当時の子どもたち(現在42歳)が今でもボディパーカッションのことを覚えてくれていたのは感激でした。
この連載では、導入にちょっとした活動を入れるだけで、すべての子どもたちがからだでコミュニケーションをとり合い、クラスみんなが一体感を感じることのできるようなボディパーカッションやボイスアンサンブルの活動をご紹介していきます。
※名称「ボディパーカッション」は、子どもたちと一緒に考えた造語です。体全体(ボディ)を打楽器(パーカッション)にして演奏するので、このように名付けました。
導入を成功させるポイント
- 一番のポイントは、先生自身が「恥ずかしい気持ち」を捨てて、楽しむこと。
- 合言葉を言う前に、みんなでひざ打って雰囲気を盛り上げる。(適当でも大丈夫!)
- 2パートに分けて掛け合うことで、お互いに協力し合う雰囲気をつくる。
- 上手く声が出せない子、特別支援の必要な子どもも参加できるように、最初のひざ打ち、最後に手を挙げることを指示する。(掛け声ができなくても、手を打ったり、手を挙げたり参加することで、グループ全員の一体感ができます。)