- 学級経営ガイドブック
- 学級経営
1 はじめに
11月が終わり、12月を迎えようとしています。学級担任をされている読者の皆さんは、どのように過ごされたでしょうか? 多賀(2018)は教育現場での経験から、「荒れやすい時期」として「6月、11月、2月」をあげています*1。私自身も学校現場にいて、そのことを強く実感していますし、学級経営を特に丁寧に行っています。
『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり』シリーズの1〜6年生の著者6名は、その著書の中で、11月・12月に以下のようなことを行うことを提案しています*2。目次から主なものを列挙します。
1年生(近藤佳織)
- マラソン大会をみんなで乗り切る「お守り大作戦」
- サインをつかみ、手を打つための質問紙の活用
- 子どもが成長!まわりを巻き込む生活科
- 言葉を意識する「ふわふわ言葉とチクチク言葉」
- 自分たちで決めたルールは守る〜「クラス会議」を通して〜
2年生(宇野弘恵)
- 主体的に考えられる学習プログラム1・2
- 自己省察できる場を作ろう
- みんなでお楽しみ会を成功させよう!
3年生(岡田広示)
- 子どもの目的と質的な変化をみる
- 子どもたちだけで活動が成功したと思わせる
- 行事で培った力を見つける
4年生(橋健一)
- いじめの兆候を見逃さない
- いじめについて考える授業を行う
- いじめを解決する方法を模索する
- 学び合う授業に取り組む
- 自治的活動につながる話合い
- 自治的活動のすすめ方
5年生(南 惠介)
- 授業で自治的な集団を育てる
- 行事の後は、注意する時期
- 楽しい米パーティーをしよう
6年生(松下 崇)
- 自分(たち)の力で最後までやり抜く力を育てるお楽しみ会(学級集会)
- 「加害者」「被害者」「傍観者」それぞれの立場へのいじめ指導
これらを整理すると、この時期取り組むこととして、以下のようなものが見えてきます。
- 子どもたち一人一人の見取りを丁寧に行う
- 子どもたちの人間関係に気を配り、指導する(いじめへの指導を含む)
- 授業の中で子どもたちに任せる部分を多くする
- 学級内でのイベントを行えるようにする
2 学習や学級内のイベントを子どもたちに任せるポイント
「子どもたち一人一人の見取りを丁寧に行う」「子どもたちの人間関係に気を配り、指導する」ことは、11月・12月だけに限ったことではなく、継続的・計画的に一年間行うことです。学級経営の基礎・基本と言ってもよいでしょう。「荒れ」を感じやすいこの時期は、その基礎・基本を丁寧に行っていくというのは大切なことです。
また、教師のかかわりを徐々に減らしていき、子どもを自立させようという試みは、一年の半分を過ぎたこの時期に多く見られる実践と言えます。では、どのようなことに注意して学習や学級内のイベントの時間を子どもたちに任せればよいのでしょうか。
(1) 目的を確認する
そもそも、なぜ子どもたちに学習や活動を任せるのでしょうか? それまで培ってきた思考力や判断力、コミュニケーション力を、教師の指示なしに活用する力を育むためでしょうか。それとも、教師が子どもたちに任せるという態度をとることで、子どもたちの意欲を引き出すためでしょうか。
またこの場合、ある特定の子どもたちだけがそれらの力を発揮したり、成長したりしてそれ以外の子どもたちは「ただ乗り」という場合もあります。目的をはっきりさせたらそれらがどの子どもにどの程度身に付いていて、どのように育ったか、評価できるようにすることも大切です。
(2) 何を「任せるか」内容を設定する
子どもに「任せる」といって、なんでも任せていいかというとそれは違います。『平成29年版 小学校学習指導要領解説 特別活動編』は、「児童の自発的、自治的な活動とするためには、学校として児童に任せることができない条件を明確にして指導することが大切」とし、次のように例を示しています*3。
例えば、個人情報やプライバシーの問題、相手を傷付けるような結果が予想される問題、教育課程の変更に関わる問題、校内のきまりや施設・設備の利用の変更などに関わる問題、金銭の徴収に関わる問題、健康・安全に関わる問題などが考えられる。
これは、小学校の特別活動に限定された内容ですが、学習中、子どもに任せる際にも参考となる視点です。
学習においては、学習課題の設定や課題の解決方法の選択、単元全体の学習計画そのものを子どもたちが計画するといったものが考えられます。上記の内容、特に「個人情報やプライバシーの問題」「相手を傷付けるような結果が予想される問題」「教育課程の変更に関わる問題」はきちんとクリアしておかなければなりません。子どもに任せる分、事前に綿密に計画を立て、必要に応じてきちんと子どもたちに説明することが大切だと言えます。
(3) 環境を整える
これは、(2)で書いたこととも密接に関係しますが、子どもたちの教室の環境を整えます。たとえば、学習中、子どもたちだけで活発に話し合えるようにホワイトボードを用意したり、お楽しみ会(学級集会)に向けて様々なものが作れるよう、色画用紙やカラーペンが自由に使えるように置き場を作ったりします。
その際、子どもたちの活動に最適な環境を設定することが大切です。教師が環境を整えすぎると、せっかく「子どもに任せる」ことを選択しながら、子どもたちの行動範囲を狭めることにつながりかねません。かといって、「さあ、やってみましょう」と投げかけられても環境が荒れていては、子どもたちは様々な困難にぶつかりやる気を失ってしまうでしょう。
3 おわりに
今の時期、子どもたちに任せようと考えると、子どもたちのそれまでの育ちが分かってきます。冬休み前に子どもたちの成長をチェックし、冬休み明けからの最後の3ヶ月の過ごし方を考えてみてはいかがでしょうか。
*1 多賀一郎『大学では教えてくれない 一年を乗り切る学級づくり 教師力を高める方法と心構え』
明治図書、2018
*2 近藤佳織『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり 1年』明治図書、2016
宇野弘恵『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり 2年』明治図書、2016
岡田広示『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり 3年』明治図書、2016
橋健一『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり 4年』明治図書、2016
南惠介『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり 5年』明治図書、2016
松下崇『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり 6年』明治図書、2016
*3 文部科学省『平成29年版 小学校学習指導要領解説 特別活動編』東洋館出版、2018