著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
中学校理科授業を劇的に変える極意がここに!
京都市教育委員会指導主事海老崎 功
2012/10/29 掲載
今回は、海老崎功先生に、新刊『スペシャリスト直伝! 中学校理科授業成功の極意』について伺いました。

海老崎 功えびさき いさお

京都市教育委員会/京都市青少年科学センター指導主事。
高校数学、物理、化学、中学理科などを担当し現在に至る。この間、同志社女子大学非常勤講師(兼職)、物理教育学会近畿支部理事を務める。東京書籍中学校理科編集委員、科学技術振興機構サイエンスレンジャー登録講師。東レ理科教育賞、東書教育賞、教職員発明展など入選多数。検定教科書や指導書、参考書、実験本などの執筆多数。開発教材のいくつかは市販されている。学芸員、社会教育主事資格所有。京都教育大学院では学校経営ディプロマおよびエキスパートディプロマ(理科教育)も取得。福岡市出身、京都教育大学・同大学院卒、東京理科大学大学院科学教育研究科博士後期課程在籍。

―本書には、理科授業の極意が詰まっています。その極意の根底にあるのが、「授業本番より事前準備に時間をかける」ということだと思うのですが、準備の時間を生み出すことが難しいという声も聞こえてきそうです。海老崎先生流、時間を生み出すコツ・秘訣を教えてください。

 準備には時間がかかります。自転車操業的に準備→授業とやっていてはしんどいだけです。私は、その後の時間が短縮されるような準備を心掛けています。たとえば、理科室がいつも使用でき、時間割もうまく組まれていれば、一度の準備で連続して数クラスで同じ実験をすることができるでしょう。私はそこから「準備」しています。つまり、理科室がいつも使えるように整備することや、時間割の作成にかかわることなども大切な準備だと思います。

―U章では、理科室経営についてまとめられています。先生の授業では、定期テストの返却も含め、すべてを理科室で行うとのことですが、理科室にこだわる理由は何でしょうか。

 こだわるのではなく、理科室でやるのが効果的だからです。理科室には、実験器具だけでなく、提示装置をはじめその他の必要なものがすべてそろっています。正確には「そろえた」ですが、普通教室と違って理科室は、理科教員だけが注意すれば常にきれいで学習しやすい環境を維持できます。私にとって理科室は「特別教室」ではなく、「理科を学習するふつうの教室」です。生徒にも学年最初の一週間ほどでその意識を浸透させます。

―V章で一部が紹介されているように、先生はたくさんの自作教材も開発されています。若手の先生方が、教材の自作にチャレンジするときのポイントを教えてください。

 まず、工作力を高めることです。そのためにはとりあえずやってみることです。最初から教材を上手に自作できる人はいません。また、バンドソーやボール盤などの基本的な工作機械を使えるだけでも、工作の幅が広がります。ただ、基本的な機械といっても安全上の注意点がいくつもあり、はじめは熟練した人に習わないと難しいです。それらが習得できる研修会などに参加すれば、工作力だけでなく工作意欲も高まります。

―Z章では、高校受験対策についても言及されています。中学生にとって、受験は大きな問題だといえますが、理科の受験指導などは、どの程度・どのような方法で行うべきと考えていらっしゃいますか。

 学習指導要領を大きく逸脱しているようなものの対策は難しいですが、発展的な問題程度に対応できる力は学校だけで身につけさせるべきです。毎日の授業はもちろん、定期テストも工夫し、出題形式や内容の一部を受験問題を参考にしています。また、短時間といえども朝学習も積み重ねるとたくさんの取り組みができます。しかし、最も大事なのは、自学自習の力を生徒自身が身につけることです。この取り組みとして、この本でも紹介した夏季課題「一日一題」を実施しています。

―最後に、本書を活用して、理科授業づくりに取り組まれる先生方にメッセージをお願いします。

 技法だけまねしても、生徒も教育環境も違う学校ですぐに役に立つとは思えません。この本は「理科授業改善の技法集」ではなく、時間をかけて考え、手を動かし、試行錯誤すれば成果をあげられるという、かっこよく言えば理科教員としての「生き様」をまとめたものです。理科室での実験学習が順調で、成績の上昇を生徒が実感できれば、クラス経営など他の多くのこともうまくいきます。だから私は、理科の授業や実験、課題、定期テスト、朝学習などは手を抜きません。ぜひ、一緒にがんばりましょう!

(構成:茅野)
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