- 著者インタビュー
- 学級経営
辛いこと、苦しいことがあると、人は「いま」に縛り付けられます。いまの辛さ、苦しさをどうすれば避けられるか、どうすれば逃げられるか、そればかり考えます。いいえ、そんなことさえ考えられずにもがき苦しむことさえ少なくありません。教師も学級崩壊の渦中にあるとき、或いは執拗な保護者クレームに晒されているとき、そんな状態になります。でも、そういうときには5年後の自分、10年後の自分がこの出来事をどうとらえているだろうかと想像してみてはどうだろうか。きっと、あれば自分にとって必要な経験だったと成長の糧にしているのではないか。もしかしたら、もう笑い飛ばせているかもしれない。そんな発想で「いま」を見つめてみると、「いま」の辛さ、苦しさの見え方もきっと変わってくるのではないでしょうか。今日のことでも明日のことでもない、明後日のことを考えながら「いま」を生きてみよう、そんな思想ですね。
教師にはそれぞれのキャラクターがあります。見かけが怖そうとか優しそうとか、声のトーンが高いとか低いとか、毒舌が似合うか自分を落とすのが似合うかとか。もちろん性別や年齢でもキャラクターは変わります。怖そうな雰囲気の先生が怒鳴ることと優しそうな雰囲気の先生が怒鳴ることとでは、その効果は異なります。年配の先生に慰められるのと若い先生に慰められるのとでも、その効果は異なります。あたりまえのことなのですが、教育界では意外と意識されていません。まずは自分のキャラクターがどのように子どもや保護者に受け止められているのか、それをよく分析する必要があるのです。教育技術を使うにも、指導方法を考えるにも、自分のキャラクターに合ったものを用いるのが最も効果を発揮するのだと考えています。
一つは、適度な距離を意識することですね。遠すぎてもダメですが、べったりと近すぎてもダメです。人間関係のトラブルというのは適切な距離から逸脱しているときに起こりますからね。
もう一つは、いつも上機嫌でいることでしょうか。対子ども、対保護者、対同僚……。常に上機嫌で接していれば、そうそう問題は起こらないものです。問題はいつも上機嫌でいられるような生活を創造していくことですね。全人格的な努力も必要かもしれませんし、時間に追われて焦ることのないように仕事術も身につけなければなりません。そんな生活サイクルのことまで考えたうえで、敢えて「上機嫌でいること」と言っています。
簡単に言えば、自身の経験を語ることですね。それも、だれもが経験しているような日常的な話題をちょっとしたユーモアで包み込む、それがコツですね。スーパーマーケットでの買い物で、通勤の電車の中で、休日の公園で、ちょっとだけまわりの人たちを観察しながらネタを収集すると良いです。意外と人間っておもしろい動きをしているもので、いろんなことを考えさせてくれます。
この本は教師力を高める筋道を提示しているわけではありません。私はこんなふうに考えています。教師として生きるうえでのいろんな領域がこんなふうに結びついて、仕事上の思考ネットワークが頭の中に形成されています。みなさんも、ご自身独自の思考ネットワークをぜひつくってください。そうすれば、仕事をするうえで戸惑ったり迷ったり悩んだりということが減って、様々な事柄に対して自分なりに判断して行動できるようになりますよ。そんな思いを込めて書きました。御批正いただければ幸いです。