- 著者インタビュー
- 幼児教育
この諺は、子どもの個性や人格はこの時期に決まるという趣旨で用いられることが多いのですが、むしろ子どもは1、2歳の頃から、いよいよその人らしく自我を芽生えさせ、しっかりと自立しようとしているという観点が含まれています。序章で、「1歳から2歳にかけての子どもたちにとって、保育所という環境は、いよいよその個性と能力を存分に発揮できる機会に満ちあふれています。……」と記しました。保育者の皆様方は、1、2歳の一人ひとりの子どもたちの主体的な自我の心を尊重し、先ずはその思いを受け止め、寄り添う保育がとても大切だと思います。子どもたちの前向きな、一所懸命な自己主張に余裕をもってかかわってみては如何でしょうか。
「○歳児クラス」というシリーズ本の基本には、この年齢段階の子どもにとって標準的な成長・発達とはおおよそこういうものです、したがってこのような保育の方針や方法が大切です、という趣旨は必ず含まれています。しかし、本書の編集方針はそれに加えて、各年齢段階の子どもについてのみ取りあげているのではなく、発達の連続性に主眼を置いています。つまり、一人ひとりの子どもたちが着実に年月齢を重ね、育っていく姿を連続性をもって捉える際にも参考になり得るように、目次構成や内容構成を配慮しています。それはさらに、園全体や保育者が、子どもたちの生活の連続性、発達の連続性について議論し検討を加える歳の重要なポイントも含まれています。
発達は連続しています。本シリーズは便宜的に年齢をタイトルにしていますが、実際に目の前にいる子どもは同じ1歳児という年齢でも一人ひとり違います。発達は年齢だけではなく、それまでどのような経験(保育)を積み重ねてきたのかにも大きく影響を受けます。1歳という歴年齢でもそれまでに大切にしたい経験が不十分の時、たとえば、0歳児後半のような姿を現します。保育は目の前の子どもの理解をもとに展開されるものですから、年齢を取り払って発達過程に合わせた保育を展開することが重要になることもあります。0歳児の担任だから0歳児を理解すればいいとか、1歳児担当だから1歳児を理解すればいいというものではなく、本シリーズは、担任にかかわりなく参考にできるかと思います。
今、保育界は次なる変革の時期を迎えています。子ども・子育て関連3方が公布され、幼保連携型認定こども園の行方や、保育所、幼稚園の今後に大きな関心が向けられるでしょう。総合こども園法が廃案となり、わが国における完全幼保一元化はなりませんでしたが、今後幼保一体化の歩みは着実にすすんでいきます。とくに、養護と教育の一体化の歩みは重要なポイントです。それは3歳児以上の保育に限るものでは全くありません。0、1、2歳児においても、保育における生活・遊びの豊かな展開はまさに、乳児保育における養護と教育が一体となった姿です。その点でも、本書を十分参考にしていただければと思います。
1歳児の発達の特徴は一言で表現すると「できないのにやりたがる(自立への欲求)」時期です。そして、この時期の保育は、この子どもの自立への欲求を受け入れ(主体としての子どもの願いや思いを受けとめること…保育指針)たところから保育が展開されることになります。しかし、保育者の子どもの育ちへの願い(保育の目標)ももっています。1歳児はまさに、子どもの今を生きる欲求と保育者の子どもの育ちへの願いの対立の多い時期かと思います。このお互いの対立する願いを、お互いの願いがある程度満たされるような生活(保育)として作り出していく保育者の創造性が要求されます。子どもの視点で生活を考えられるといいかと思います。