ある先生から、「質的データや量的データって何ですか?」という質問がありました。これらの用語は統計データを扱う際の基本中の基本ですが、日本の小中高のカリキュラムにはありません。
また、別の先生から、「1000個のおみくじの中から大吉の出る割合を標本調査で推測するという授業を計画しているのですが、母集団の数と標本の数に適切な関係というものがありますか?」という質問を受けました。推測統計の考え方を理解していれば悩む必要のない内容です。
そして、現在の若い世代(平成10年学習指導要領世代)の先生方の多くは、そもそも中学校、高等学校でご自身が統計を学んでいません。
これらのことから、統計の基本的な事項を理解することが指導改善の第一歩だと考え、第1章の「統計の理論」を設け、具体例とともにていねいに解説しました。
平成24年2〜3月に実施された各都道府県の公立高校入試では、「資料の散らばりと代表値」が26道府県、「標本調査」が11府県で出題されています。特に、大阪府と福岡県では「資料の散らばりと代表値」と「標本調査」の両方が出題されています。参考までに、統計の指導が行われていた(平成元年学習指導要領)9年入試では、「資料の整理」が17道県、「標本調査」は出題なしでした。指導の理念・内容・学年などが異なり単純には比較できませんが、増加の傾向がみられます。
学習指導要領の解説では、必要に応じてコンピュータなどを積極的に利用することを求めています。コンピュータ室だけでなく、普通教室で教師がパソコン画面を黒板や大型TVに投影しながら授業を展開することも考えられます。単元前半の「習得」の場面では、紙と鉛筆で表や図をかく技能や読み取る力を高め、知識・理解を深めることが大切なので、生徒のICTの使用についてはそのタイミングを事前に検討しておきたいところです。単元後半の「活用」場面では、統計ソフトを使ってヒストグラムなどを作成する時間を短縮すれば、より長く考察の時間を確保できます。また,ICTで示した表や図を適宜プリントアウトしてノートに貼るなどして、活動や思考の履歴が残る(ふり返りができる)ようにすることも重要です。
本書は、中学校数学科に新設された「資料の活用」領域の統計の内容について、「統計の理論」「統計の授業づくり」「統計の授業実践」という三部構成でまとめました。統計を十分に学習していない世代の先生方、そして、しばらく統計の指導をしていなかった先生方にも理解していただけるように配慮して執筆しています。
ビッグデータに囲まれた明日を担う子どもたちに、豊かで確かな統計の指導をしていきましょう!
この冬休みに勉強させていただきます。