- 著者インタビュー
- 特別支援教育
キャリア教育とは「自立、社会参加を実現する教育」「就労率をアップする教育」「人生の質を高める教育」と言われています。これは現場の先生方が特殊教育の時代から目指してきた教育そのものです。そうであるならば、この教育ではキャリア教育など取り入れる必要はないのではないか、ということになりますが、今なぜキャリア教育がクローズアップされているかというと、今までキャリア教育そのものの教育を進めてきましたが、実際にはその成果が出ていないことが課題になっているのです。キャリア教育の視点でもう一度指導内容、指導方法を検討し、成果を上げる教育を確立しようというのが、特別支援教育で求められているキャリア教育です。特別支援教育の一層の充実、発展を目指すために取り入れられた教育であるという認識が必要です。
キャリア教育は小学部から行わなければならない教育です。小学部からの12年間の積み重ねがあって初めて成り立つ教育です。これが最も重要なところです。
元々、特別支援学校は小、中、高の一貫校として、連続的、継続的な指導ができるように作られました。しかし、いつの間にか、小、中、高の連携がおろそかにされ、各学部が独立しているかのような運営がなされるようになりました。学校現場では「各学部間の連携は永遠の課題である」と言われることもありました。キャリア教育を取り入れることは、こうした課題を解決することが求められているのです。キャリア教育の視点で今までの教育を見直せば、間違いなく学校教育12年間の見通し、方向性が見えてきます。
一言で言えば、指導・訓練重視から支援重視の教育に変わらなければなりません。今までの教育では、できることやスキルを高める指導や訓練が重視されてきました。もちろん、できることを増やしたり、スキルを高めることは重要です。しかし、今、学校現場で課題になっているのは、12年間積み重ねてきたできることやスキルが実社会で機能しない、通用しないことです。これでは教育の意味がありません。原因は、できることやスキルだけに目が向き、意識や意欲、主体性が置き去りにされていたところにあります。キャリア教育は生きる力を身につける教育です。これからは、「意識してできる」「意欲的にできる」「主体的にできる」子どもを育てる支援のあり方が求められるのです。
キャリア教育を取り入れるということは、「日常生活の指導」「生活単元指導」「作業学習」の指導目標を今までと変える必要があります。行動に焦点を当てるのではなく、内面に焦点を当てた指導を行うことが重要なポイントとなります。「日常生活の指導」は、できないことをできるようにする指導よりも、意識してできる、目的的にできる指導を重視します。「生活単元指導」は、やらされる学習でなく、主体的に自ら課題を解決できる学習を行います。「作業学習」は作業ができる学習でなく、貢献が実感できる学習を行います。意識、意欲(主体性)、貢献をキーワードに、それぞれの学習内容、学習方法を設定し直す必要があります。
キャリア教育を取り入れた特別支援教育を考えると、キャリア教育がこの教育でいかに重要であるかがわかります。これからの特別支援教育の意味、方向性見えてきます。キャリア教育を取り入た授業を考えれば、今までの授業にいかに課題が多いかがわかります。指導内容や指導方法が自ずから変わってきます。ぜひ、この機会に「教育を変える」「授業を変える」「自分を変える」取り組みをしてほしいと思います。全国の特別支援学校で確かなキャリア教育が取り入れられたならば、特別支援教育も新たな時代に入り、子どもの将来にとっても明るい充実した教育が展開するようになると信じます。そのためにまとめたのが本書です。具体的事例を挙げ、実践に結びつくよう、わかりやすくまとめていますので、ぜひ参考にしてほしいと思います。
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