「アクティブ・ラーニング」は、学校種によって、やらなければならない・やらなくてもよい、困難である・困難ではない、といった選択的なことではなく、小学校から大学までを通して育成すべきものです。従来、小・中学校の方がアクティブで、大学は講義型で遅れているという認識もありました。義務教育段階では、学習者が幼いので育成に時間がかかりそうに思いますが、それこそ順序よくステップをふんで育成することが重要です。具体的には、カリキュラムと単元展開及び授業の中に、学び方の知識・技能を十分与え、豊かなアクティビティによって、知識・技能とともに定着させることが大切です。その要が、本書での学習者のための発問づくりになります。
読解力は、多様なテキストの特色を知り、それらのプロセスをメタ認知したうえで単元の学習課題に応じて読書活動を展開する能力です。特に、読書プロセスの展開に応じ、取り上げた文章や本を深く読み、分析、解釈、関連付け、評価等の読解を施し、自らの読書目的に生かしていく能力が求められます。このような深く読む読書行為を精読力と言います。予想して読む、分析して読む、構造化して読む、比べて読むなどのリーディングストラテジーによって、多様な目的に応じる精読力がないと、学習者自らが解釈できるような発問の作成はとても難しいでしょう。
「教材研究」は、単元構想時において、年間指導計画から始まって、単元展開に必要なことを分析し、授業に備える活動になります。その要になるのが精読を要求する「教材解釈」と「発問づくり」です。教材を解釈し、その解釈を学習者に強要したり、知識として解説したりするのではなく、学習者自ら解釈を施していく「発問」=解釈の観点(パラダイム)に切り替える能力が教師に要求されています。「どのように学ぶか」「何を学んだか」「何を身に付けたか」を支援する発問をつくるという新しい時代が来たのです。
発問は、学習者のために構想されます。したがって、いかに学習者自らが気付いていくかに最も留意しなければなりません。発見的なものであること。そのためには、従来学習した知識・技能を活用することと、新規の知識・技能を与えたり、自ら体系化したりできるようになっていなければなりません。この統合こそが最も意識すべきことです。
新しい時代に応じた読書活動が重視され、読解力のイメージもすっかり変わりました。アクティブ・ラーニングを標榜する今、改めて文章や本を精読し、解釈や評価を深め、発問をつくり出す力を現場教師に与えたいと、本書を刊行しました。多くの人が共に勉強し、よい授業を創り出すことに励んでほしいと思います。
-
- 1
- れんじ
- 2015/6/25 6:25:58
若手教員が増える中、日々の授業の学びになる著書の発刊が大変嬉しいことです。