著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
アクティブ・ラーニング時代の発問づくり
京都女子大学発達教育学部教授井上 一郎
2015/6/23 掲載

井上 一郎いのうえ いちろう

奈良教育大学助教授、神戸大学教授、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官・学力調査官を経て、現在京都女子大学発達教育学部・大学院発達教育学研究科表現文化専攻教授。国語教育学者。「全国国語教育カンファランス」「全国読書活動研究会」「国語教育公開講座」等を主宰。「小学校全国国語教育連絡会」会長。
『子ども時代』『教師のプライド』等のエッセイ集を刊行。主な著書・編著書として、『読む力の基礎・基本』2003、『誰もがつけたい説明力』2005、『読解力を伸ばす読書活動』2005、『書く力の基本を定着させる授業』2007、『話す力・聞く力の基礎・基本』2008、『知識・技能を活用した言語活動の展開』2009、『言語活動例を生かした授業展開プラン低学年』『同中学年』『同高学年』2010、『学校図書館改造プロジェクト』『記述力がメキメキ伸びる!小学生の作文技術』2013、『学力がグーンとアップする!自学力育成プログラム』2014他。いずれも明治図書。

―子どもが主体的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」は、小・中学校段階での実践はなかなか難しい、という声もあります。本書は、どのようにしてそれを実現させているのでしょうか。

 「アクティブ・ラーニング」は、学校種によって、やらなければならない・やらなくてもよい、困難である・困難ではない、といった選択的なことではなく、小学校から大学までを通して育成すべきものです。従来、小・中学校の方がアクティブで、大学は講義型で遅れているという認識もありました。義務教育段階では、学習者が幼いので育成に時間がかかりそうに思いますが、それこそ順序よくステップをふんで育成することが重要です。具体的には、カリキュラムと単元展開及び授業の中に、学び方の知識・技能を十分与え、豊かなアクティビティによって、知識・技能とともに定着させることが大切です。その要が、本書での学習者のための発問づくりになります。

―本書では、読解力の中でも特に「精読の能力」を高めることに焦点があてられていますね。「精読力」とはどのような力か、簡単に教えて頂けますでしょうか。

 読解力は、多様なテキストの特色を知り、それらのプロセスをメタ認知したうえで単元の学習課題に応じて読書活動を展開する能力です。特に、読書プロセスの展開に応じ、取り上げた文章や本を深く読み、分析、解釈、関連付け、評価等の読解を施し、自らの読書目的に生かしていく能力が求められます。このような深く読む読書行為を精読力と言います。予想して読む、分析して読む、構造化して読む、比べて読むなどのリーディングストラテジーによって、多様な目的に応じる精読力がないと、学習者自らが解釈できるような発問の作成はとても難しいでしょう。

―本書は、5年以上にわたって研究された「教材解釈」と「発問づくり」をまとめられたものとのことですが、教材解釈と発問づくりとはどのような関係があるでしょうか。

 「教材研究」は、単元構想時において、年間指導計画から始まって、単元展開に必要なことを分析し、授業に備える活動になります。その要になるのが精読を要求する「教材解釈」と「発問づくり」です。教材を解釈し、その解釈を学習者に強要したり、知識として解説したりするのではなく、学習者自ら解釈を施していく「発問」=解釈の観点(パラダイム)に切り替える能力が教師に要求されています。「どのように学ぶか」「何を学んだか」「何を身に付けたか」を支援する発問をつくるという新しい時代が来たのです。

―本書では、発問モデルが多数収録されていますが、自分で発問をつくる際にこれだけは意識すべき、という点をぜひ教えてください。

 発問は、学習者のために構想されます。したがって、いかに学習者自らが気付いていくかに最も留意しなければなりません。発見的なものであること。そのためには、従来学習した知識・技能を活用することと、新規の知識・技能を与えたり、自ら体系化したりできるようになっていなければなりません。この統合こそが最も意識すべきことです。

―最後に、全国の先生方へ向け、メッセージをお願いします。

 新しい時代に応じた読書活動が重視され、読解力のイメージもすっかり変わりました。アクティブ・ラーニングを標榜する今、改めて文章や本を精読し、解釈や評価を深め、発問をつくり出す力を現場教師に与えたいと、本書を刊行しました。多くの人が共に勉強し、よい授業を創り出すことに励んでほしいと思います。

(構成:木村)
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • れんじ
    • 2015/6/25 6:25:58
    若手教員が増える中、日々の授業の学びになる著書の発刊が大変嬉しいことです。
コメントの受付は終了しました。