著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「多様な学びの場」での学びの姿を描き出す
ノートルダム清心女子大学講師青山 新吾
2015/7/7 掲載
 今回は青山新吾先生に、『THE 特別支援教育〜特別支援学校・特別支援学級等編〜』について伺いました。

青山 新吾あおやま しんご

1966年、兵庫県生まれ。小学校勤務・岡山県教育庁勤務を経て、現在、ノートルダム清心女子大学講師。学校心理士、臨床発達心理士。主な著書に、『今さら聞けない! 特別支援教育Q&A』『THE 特別支援教育〜通常の学級編〜』『自閉症の子どもへのコミュニケーション指導』『青山新吾―エピソードで語る教師力の極意』『特別支援教育を創る!』『吃音のある子どもたちへの指導』『個別の指導における子どもとの関係づくり』(明治図書)などがある。

―今回の書籍は、『THE 教師力』シリーズの1冊として、『THE 特別支援教育〜通常の学級編〜』の姉妹編、「特別支援学校・特別支援学級等編」です。本書のねらいと、その背景にある先生の想いについて教えて下さい。

 現在、授業のユニバーサルデザイン化に代表されるように、通常学級での特別支援教育の取り組みが注目されています。しかし、様々な実態のある子どもたちの教育は、「多様な学びの場」で行われています。本書では、「多様な学びの場」における子どもたちの学びの姿を浮き彫りにすることで、多くの先生方に多様な実践イメージを持っていただく一助になることを願って編みました。

―日本の教育は「共生社会」の実現を目指して「インクルーシブ教育システム」の構築に向けて動き出していますが、その点について先生のお考えをお聞かせ下さい。

 すべての子どもたちが、自身の居場所を持ち、安心して生きていける「小さな幸せのかたち」を目指していくのだと思います。そのためには、子どもたちと周囲の関係を丁寧に紡いでいくことと、それぞれの子どもの力を伸ばしていく教育の両方が求められます。日々の実践の方向性をこの両面から検討しつつ進めていくことが重要だと考えます。

―本書では「通常の学級編」と対応した形で、特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室といった多様な学びの場での取り組みが紹介されています。「本書のオススメの読み方」があれば、お教え下さい。

 読者がお仕事をなさっている場ではないところの実践に注目していただければと思います。同時に、これまでに、あまりおつきあいなさったことのない「障害」のある子どもの学びの姿にもまなざしを向けてみてください。それは、教師としての「見方」の幅を広げ、実践イメージを豊かにするきっかけになると思います。

―特別支援教育においては、障害特性に応じた指導も重視しながら、障害特性によらない、子どもをトータルにとらえた視点からの指導や支援も大切と言われます。本書でも詳しく紹介されていますが、この点について教えて下さい。

 子どもたちは、日々の暮らしの中で、喜んだり悲しんだり、困ったりしながら進みます。まずは、暮らしの中の子どもたちの姿と感情にまなざしを向けることだと思います。その際に「どうして○○をするのだろう?」と不思議な気持ちを抱いてみてください。その要因の1つに障害特性が関連していることが有ります。そこで、障害特性に応じた指導の意味が見えてくるのだと思います。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 本書では、「多様な学びの場」で長年実践を重ねてこられた先生方に、最も伝えたいことを実直にお書きいただいきました。それゆえ、内容の統一性はなく、記述の重点もバラバラです。しかし、これこそが、一人一人の子どもに応じた教育の多様さを象徴しているのだと思います。皆様には、ご自身の立場とは違う実践を知りつつ、ご自身の実践と重ねて楽しくお読みいただければ幸いです。

(構成:及川)

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