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- 著者インタビュー
- 学級経営
思春期の子どもたちとの関係づくりは得意ですか。少しでも、難しい思いをしたことがある方や、ちょっと苦手意識のある方にはおすすめです。
本書は理論編と実践編から構成されます。
理論編からは、思春期をどうとらえ、どのように子どもたちに寄り添うことが適切なのかについて方針を述べました。
実践編では、「@思春期の指導において大切にしていること、A思春期の具体的指導、B思春期指導の極意」の3つの視点からそれぞれの執筆者の具体的な取り組みを述べました。その考え方を参考にしてもいいし、方法論を参考にしてもいいです。活用の仕方は様々です。
松下崇、松尾英明、飯村友和、長崎祐嗣、山田将由、永地志乃、近藤佳織、白根奈巳、堀川真理、久下亘、山本宏幸、大谷啓介(敬称略)の小中学校の精鋭たちが縦横無尽に渾身の実践を紹介しています。確かな考えに基づき、具体的な実践を展開しています。
思春期の子どもたちには、強制やごまかしは利きません。強制をすれば抵抗し、ごまかせばすぐに見破ります。思春期の子どもたちは、ルールに志向ではなく、理解志向なのです。つまり、規則や約束事で行動を選択するのではなく、自分を理解してくれる人の言うことを尊重し、それに基づき行動を選択するのです。思春期の子どもたちは、信頼関係のある人の言うことを聞くわけです。
反抗的な行動や、小学校の高学年の女子によく見られる特徴的な行動などにも、理由があります。その理由を理解しようとすることが信頼関係をつくる最初の一歩です。
例えば、私的グループの形成においては、男子は、趣味や運動などの特定の目的を集団を形成する傾向をもち、女子はグループ化することそのものが目的であることがあります。攻撃的言動においては、男子は、暴言や暴力など見えやすい形で行われ、女子は、匿名の嫌がらせなど見えにくい形で行われるなどと言われます。
しかし、そこにはその行動に隠されたメッセージがあります。思春期の子どもたちとかかわりや指導においては、性差そのものよりも、性差を含めた自分をどう受け止めているかに着目した方が効果的でしょう。問題行動場面を考えれば、成長から問題行動が起こるのではなく、成長に伴う自己認識の不具合から起こっていると考えられます。
関係性の不具合は、大抵コミュニケーション不足から来ると思われます。そこからちょっとした誤解が、不信感に育ち、気付いたときにそこからちょっとした誤解が、不信感に育ち、気付いたときには関係性が悪くなっていることがあります。
関係性が崩れてしまったときに、教師が諦めたらまず関係が修復をすることはないと思った方がいいでしょう。諦めずに会話を試みることです。そして、一対一で、互いの気持ちを伝え合う時間をとることがもっと有効な立て直しの方法です。
子どもたちの主体性を育てるには、子どもたちに決定権を委ねることが大事です。何かこれだけはというトピック的な取り組みではなく、教師のリーダーシップを教示的なリーダーシップから、委任的リーダーシップに変換することが有効です。
様々な活動を子どもたちに委ねてみたらどうでしょうか。「〜しなさい」「〜してください」ではなく、「〜してくれないかな」と依頼してみたらどうでしょう。日常的に「この問題は、先生だけではとても解決できないからみんなの力を貸して欲しい」と、問題解決を子どもたちに依頼できるような学級集団にしたいものです。
まとめようとする発想を捨てることから始めます。子どもたちは、集団のなかに居場所を見つけることができたら、その集団に貢献しようとします。それは私たち大人も同じことです。まとめようとするのではなく、学級、学校、クラブ、部活など所属集団を好きになるようにします。そのために、互いに認め合う場や感謝される場面を設定するようにするのも一つの方法です。
思春期の子どもたちは、教師としては指導が難しい存在なのかもしれません。しかし、彼らの苛立ちや不安定さは、彼らの本音から出てくるメッセージでもあります。そうした感情に寄り添うことで、確かな信頼関係を築くことができるでしょう。
思春期の子どもたちとの信頼関係づくりは、一筋縄ではいかないからこそ、「信頼関係づくりの学校」とも言うべき、学びの宝庫なのです。思春期の子どもたちとつながる過程は、教育のプロとしての力を付ける貴重な機会なのです。