著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
教師自身の教材研究力を磨いて、たしかな読みの力を育てる授業をつくろう!
立石 泰之
2015/8/10 掲載
 今回は立石泰之先生に、新刊「国語科重要教材の授業づくり」シリーズ『たしかな教材研究で読み手を育てる「ごんぎつね」の授業』『たしかな教材研究で読み手を育てる「大造じいさんとガン」の授業』について伺いました。

立石 泰之たていし やすゆき

1972年、福岡県春日市に生まれる。東京学芸大学卒業。福岡県公立小学校教諭、広島大学附属小学校教諭を経て、現在、福岡県教育センター指導主事。全国大学国語教育学会、日本国語教育学会会員。全国国語授業研究会理事。

―本シリーズのねらいについて、教えてください。

 激変する社会に対応すべく、教育界でも様々な教育政策が打ち出されています。しかし、どんなに社会が変わっても、授業を構成する要素が「子ども」と「教師」と「教材」であることに変わりはありません。そして、長く教科書に掲載されている文学教材には、教材として愛される理由があります。本シリーズでは、それらを重要教材と位置づけ、その教材としての価値を教師自身が読み解き、子どもたちの読む力を高める実践へとつなげられるよう構成しました。
 教材研究は授業の「設計」であり、授業の成否は事前の教材研究でほとんど決まっていると言っても過言ではありません。

―シリーズの嚆矢として、まずは超定番教材である「ごんぎつね」と「大造じいさんをガン」を取り上げていらっしゃいます。それぞれの教材特性に応じた指導のポイントはあると思うのですが、共通して大切にされていることはなんでしょうか。

 読者の視点で授業をつくっていく点です。文学教材は、元々は教材として書かれたものではありません。教室の子どもたちも学習者としてではなく、読者として教材と出合います。その心の動きを教師自身が読者として自覚し、教材研究を進めていくことを大切にしています。そうすることが、子どもたちの思考の流れに沿った授業をつくっていくことにつながるからです。
 本シリーズを読んでいただくことで、「教科書の指導書に頼らなくても教材が読める」「指導すべきポイントがわかる」というようになってもらえたらと思います。

―「ごんぎつね」「大造じいさんとガン」の実践にあたって、それぞれ、ここだけは押さえておきたい、という点を少しだけご紹介いただけますか。

 「ごんぎつね」では、ごん自身も自覚していないであろう思いを読み手は感じ取りながら読んでいます。そこについて叙述を根拠にさらに深く推論していくことで、より明確なごんの思いを感じ取ることができます。例えば、「ちょっ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」とごんは後悔しますが、なぜ後悔したのでしょうか。それを考えることで兵十に対するごんの思いがさらに強く感じられるようになります。
 「大造じいさんとガン」では、大造じいさんのものの見方や考え方に注目します。その変化について考えるのはもちろんですが、本教材ではその変わらない部分について考えていくことが重要になります。
 詳しくは、ぜひ本書をご覧ください。

―この二教材に限らず、定番教材を授業するうえで気を付けたい留意点とはなんでしょうか。

 先入観をもたないことでしょう。指導した経験を重ねてくると、「この教材はこう指導すればいい」というような思いが出てきます。また、若い先生方は「これを教えればいいのか」と指導書などに書かれていることだけで指導しがちです。何度読んでも自分にとっての新たな発見がある、それが名作と言われる文学です。私たち教師も先入観をもたずに、新しい視点から教材研究してみると、今まで見えていた物語の世界が、また違って見えてくることがあります。本シリーズがそのきっかけになればと思います。見えなかったものが見える―、そんな読み方を教師も子どもも身につけていきたいですね。

―9月以降、「ごんぎつね」と「大造じいさんとガン」の指導を控えている先生もいらっしゃることと思います。読者の先生方に向けて、メッセージをお願いいたします。

 「ごんぎつね」と「大造じいさんとガン」、どちらも多くの先達が実践を積み重ねてきた教材です。多くの先生方に指導経験があり、どんな実践に対しても、みなさん、「自分も一言コメントしたい」と思うことでしょう。だからこそ、開き直って大胆な提案をしていただきたいと思います。たしかな教材研究に裏打ちされた、新たな視点からの提案ならば、きっと研究協議も充実するはずです。授業された先生方の提案が多くの先生方の学びにつながることを願っています。

(構成:林)
コメントの受付は終了しました。