- 著者インタビュー
- 授業全般
これは野中信行先生が命名された授業の考え方です。野中先生は、研究授業によく見られる重厚な指導案とかカラフルな張り物とかで構成する授業を、「ごちそう」授業と呼びました。そして、「ごちそうは、毎日だと飽きてしまう。毎日食べる味噌汁やご飯は、効率的に作ることができ、少しの手間でいろいろ変化させることもできる。しかも基本的な栄養はきちんと採ることができる。授業も、この味噌汁やご飯のようなものを目指そう。」と主張されました。これは、大曲小学校が目指す日常授業の重視と一致したのです。
本校は、学力が伸び悩んでいました。各学級のルールや授業の方法などが我流だったからです。また、初任者が毎年入ってくる状況もありました。「味噌汁・ご飯」授業では、学習規律の確立や指導言の整理、ユニット法などすぐに取り入れられる具体的な方法が提案されていました。とても取り入れやすく、子供たちの学力を詰め込みでは無く伸ばすことができると思ったのです。
最初に着手したのは、環境づくり。教室内外の環境を整え、掲示物、子供たちのノート、使用する筆記用具などから見直していきました。
次は、学習規律。ノートをきちんと取ることや、立腰(腰を立てて腰掛けたり音読したり書いたりする)言葉遣いなどに、どの学級も取り組むことにしました。
その次が、指導言の整理や1時間を分割して展開するユニット法、児童の活動をきちんと評価するフォローなどです。
これらと並行して、漢字や計算の検定や年間の各教科の内容を横断的に展開することなどにも取り組みました。本書には、それらを図表や写真を多用して紹介しています。
本校では、子供たちの自己肯定感の低さが最大の課題でした。全国学力・学習状況調査質問紙の「自分には、よいところがあると思う」という設問では、例年とても肯定的な回答が少なかったのです。そのため、少しのことでキレやすい子が多く、学習どころではないという感じでした。しかし、日常の授業がテンポ良く展開されるようになるにつれて、学校全体が落ち着いてきましたし、テストの点数やノートなど、目に見えるところが良くなるにつれて、自分や他の子を自然に認められるようになりました。
学力もゆるやかに上がりました。全国学力・学習状況調査では、全国でも低かった北海道の中で最低レベルでしたが、平成27年度の結果は、ほぼ全国平均となりました。
教育困難時代で、どの学校も児童・生徒の荒れに直面していると思います。学校全体で日常授業の改善に取り組むことにより、そうした状況を打ち破ることができるという希望の灯を北海道の片隅に点すことができたのかな、と思います。
「一灯照隅(いっとうしょうぐう)」という言葉があります。延暦寺の開祖最澄の言葉です。
「最初は小さな一隅だけを照らすような小さな灯火だが、心を込めて一隅を照らしていこう。その灯火が広がって掲げる人が万となれば、国中が明るく照らされる(万灯照国)だろう。」というのです。
ぜひ、本書を参考にして、元気のいい学校づくりを進めて欲しいと思います。