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授業における先生の役割を「マネジメント」ととらえること、例えば、運動部や芸能人のマネージャーは、自分自身は表に出ませんが、選手やスターが効果的に仕事できる環境をつくるための仕事をしています。そのマネージャーの仕事と、授業をつくる先生の仕事を同じように考えます。子どもたちが円滑に学習し、力を付けていくために、常に子どもたちの実態とニーズを踏まえた授業を構想し、授業の中で反応を見ながら、つなぐ、入れ替える、加える、を臨機応変に行えるように授業をしくんでいきます。
教えなければならないことがあるのに、子どもたちは音楽の授業になかなかノッテこないことがありました。音楽授業は座学ではなく活動が中心ですから、子どもたちが動かなければ成り立ちません。だったら、教えなければならないことをちょっと横に置いておいて、あちら側(子どもたち)からの視点で授業を考えてみよう、子どもたちは何を教わりたいと思っているのだろうか、と視点を変えた発想をしたのが「授業マネジメント」の始まりです。
大事なことは、子どもへの取材を繰り返すことです。実態とニーズはインタビューやアンケートによって把握します。一人ひとりの得意なこと、苦手なことも取材から知ります。次に、「子どもの実態のニーズ」と「教えたいこと」それぞれのパーツを並べ、つながる部分を見つけます。他方で、これまでの授業やこれからの授業で「習得してほしい内容や技能」のパーツを並べ、フィードバックやワープができるようにしておきます。「授業マネジメント」は、視界を広くもち(横軸)、過去から未来への展望(縦軸)も意識して、子どもの実態とニーズを踏まえてフットワークよく授業ができるように考えることです。
全員でリレーするという活動は、実は子どもにとって短い時間でも「ソロ」になり、一人ひとりがあぶり出されて、先生にとってはその子どもと1対1になれる瞬間となります。演奏の順番を待つ子どもは、クラスメート一人ひとりの演奏の様子を注意深く観察しますし、順番が終わった子どもも、「経験者」として自分の演奏と比較しながら観察しています。リレー奏を日常的な活動にすれば、緊張や照れが徐々になくなり、慣れていきます。そして、個人、少人数、クラス全員、の3つの活動場面がスパイラルに展開される授業をしくんでいくことによって、どの活動も質が高まっていくことが期待できます。
子どもの自発的な疑問や欲求が学習の大きな動機となり、活動の活性化、技能の伸びにつながります。すでに子どもたちがもっている疑問や欲求から始めるのが「授業マネジメント」の起点となります。でも、もしまだ疑問や欲求が育っていない状態でしたら、「どうしてだろう?」「やってみたい」と心が動くような動機付けの「音楽パフォーマンス」を先生がしてみてください。上手にできなくても大丈夫です。先生が楽しんでいる姿、先生が苦心しているけれどできるようになりたいと思っている姿は、子どもたちの好奇心とやる気に火をつけます。授業は、子どもたちと先生でつくるコラボレーション、ライブだからです。