著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
生徒の「自治」による、新しい部活づくりを!
宮城教育大学准教授神谷 拓
2016/2/17 掲載
  • 著者インタビュー
  • 教師力・仕事術
 今回は神谷拓先生に、新刊『生徒が自分たちで強くなる部活動指導』について伺いました。

神谷 拓かみや たく

1975年、茨城県出身。
中京大学体育学部を卒業後、和歌山大学大学院教育学研究科に進学。その後、筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。
博士(教育学)。日本体育学会体罰・暴力根絶特別委員会委員。現在、宮城教育大学准教授。
専門はスポーツ教育学、体育科教育学。
著書に、『運動部活動の教育学入門―歴史とのダイアローグ』(大修館書店)がある。

―現在、学校現場では、部活動の指導に苦心されている先生方も多いと思います。本書は「部活動指導」について、どのような観点から書かれた本になるのでしょうか。

 先生たちは、日々、教科の指導と、教科外における生活指導に取り組んでいます。本書では、その延長線上で指導できる、運動部活動の在り方についてまとめました。つまり、日頃の教育活動で発揮している教師の専門性を、運動部活動でも活かすということです。

―部活動指導においては、「体罰」などの問題も、たびたび取り上げられています。そうした指導に陥らないために大切なのはどんなことでしょうか?

 まずは、先ほどの回答にある、教師の専門性を基盤にした指導が重要。そこからは「体罰」という発想は出てきませんからね。次に、子どもが自分たちで問題・課題を解決していく、「自治」のイメージをもつ必要があるでしょう。そもそもスポーツやクラブという言葉の意味には、「自治」のニュアンスが含まれていますからね。

―先生が本書で提案されている「自治」による部活動指導について、簡単に教えていただけますでしょうか。

 各教科では、授業で教える教育内容があります。一般的に、それを学習内容って言いますね。それがあることで、教師は授業の計画を立て、見通しを持って指導することができます。本書では、運動部活動も、同様の視点から考えてみようと思いました。つまり、運動部活動にも教育内容があり、本書ではそれを「自治内容」と呼びました。そして、1.練習・試合、2.組織・集団、3.場・環境の観点から整理し、それらを少しずつ子どもに委ねていく見通しを示しました。

―まだ経験の少ない若手教員の方にとっては、初めて部活動の指導をするといった場合に戸惑うことも多いと思います。まずは、どういったことから、始めればよいのでしょうか。

 運動部活動を運営していくうえで、様々な課題に遭遇すると思います。その際に、全部を教師が解決しなければならないとは思わずに、「これは誰が解決することか?」と冷静に考えてみましょう。そして、子どもが解決できそうなことは、積極的に委ねていくのです。次に、その過程をメモに残しておきましょう。1.どのような課題が生じ、2.それを誰が解決したのかを記しておくのです。そして、しばらくしたら、子どもと一緒にその過程を振り返り、教師が解決してきた「自治内容」を、子ども自身が取り組めないかを議論しましょう。このように、子どもと一緒に運営していくというスタンスが重要です。
 

―最後に、読者の先生方にメッセージをお願いします。

 教師には、できる事とできない事があります。できる事は、教師としての専門性が発揮できる内容です。運動部活動に関して言えば、本書で述べているような内容です。できない事は、オリンピック選手などのエリート選手の養成です。それは教師の本務からは外れます。この当たり前の現実から、これからの運動部活動の在り方を考えていきましょう!

(構成:松川)
コメントの受付は終了しました。