著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
自律と自信が子どもを強くする!本音と本気のクラスづくり
奈良県奈良市立済美南小学校教頭中嶋 郁雄
2016/1/29 掲載

中嶋 郁雄なかしま いくお

奈良県奈良市立済美南小学校教頭。
1965年、鳥取県生まれ。1989年奈良教育大学を卒業後、小学校の教壇に立つ。「子どもを伸ばすためには、叱り方が大切」という主張のもと、「『叱り方』研究会」を立ち上げて活動を始める。教育関係者主宰の講演会や専門誌での発表が主な活動だったが、最近では、一般向けのセミナーでの講演や、新聞や経済誌にも意見を求められるようになる。
主な著書に、『学級経営サポートBOOKS クラス集団にビシッと響く!「叱り方」の技術』(明治図書)、『その場面、うまい教師はこう叱る!』(学陽書房)、『叱って伸ばせるリーダーの心得56』(ダイヤモンド社)、『「しなやかに強い子」を育てる: 自律心を芽生えさせる教師の心得』(金子書房)、『教師の道標 名言・格言から学ぶ教室指導』(さくら社)がある。

―本書では中嶋先生の代名詞ともいえる「叱り方」にこだわらず、クラスづくり全体に言及されています。先生の考える、クラスづくりにおいて大切なことを教えてください。

 子どもが集まる学級に、トラブルはつきものです。トラブルの中で、子どもは様々な経験をし、学んで成長していきます。ですから、トラブルが起きないように「転ばぬ先の杖」で防ぐのではなく、些細なトラブルであれば、見守りながら子ども自身に解決させるように導いていくことが大切だと考えています。

―本書では、「トラブルをチャンスに!」というフレーズが印象的です。多くの先生方はトラブルを避けがちだと思いますが、中嶋先生が「トラブルはチャンスだ」と考えるようになったきっかけはありますか?

 自身の経験を振り返ると、トラブルが起きたときほど、解決するために真剣に考えて、全力で行動していたのだと思います。そして、トラブルを解決する度に、力が付いていくのを感じました。自身の経験によって得られる「本物」の力です。子どもも人間ですから、私と同じなのではないかと、考えるようになりました。それが、「トラブルはチャンスだ」と、子どもに身をもって伝えたいと思うようになったきっかけです。 

―詳しくは本書で…と思いますが、今日からできる子どもがまとまるクラスづくりの秘訣を1つ挙げていただけますか?

 子どもが「本気」になる活動を仕掛け、その中から子どもの「本音」を引き出すことです。本音を出しているときの子ども達は、自我と自我をぶつけ合います。その中から、友達も自分と同じく、意見を持ち感情を備えた人間なのだと、身体で実感することができるようになります。そして、互いを尊重し合うことができるようになっていきます。最初はケンカばかりという事になるかもしれません。しかし、真剣になって「闘う」からこそ、相手を対等な人として認め合うことができるのです。そこからが、スタートだと考えています。 

―近年はとりわけ、保護者や地域の方と学校とのつながりが増えてきているように感じます。若手の先生が、保護者や地域の方と関わるうえで注意しておくべきことはなんでしょうか?

 進んでこちらから声をかけることです。そして、相手が保護者なら、子どもの様子を伝えたり聞いたりします。地域の方なら、最近の学校の様子を伝えます。ほんの一言で十分です。しばらくすると、相手から声をかけてくれるようになってきます。ここで注意しなくてはならないことは、生徒指導上の課題や、個人に関わる情報、仕事に対する不平や不満などを、うっかり口にしないようにすることです。保護者・地域の方とは、「広く浅く」「深入りをしない」ことが鉄則です。 

―最後に、これから長く教師のお仕事を続けられる先生方に向けてのメッセージをお願いします!

 昔担任した子どもや保護者と連絡をとる度に、教師という仕事の素晴らしさを改めて感じています。学校生活を共にする時期は限られていますが、学級担任は、教師であるあなた自身にとっても、子ども・保護者にとっても、一生忘れられない存在になります。時には、苦しみ悩むこともあるでしょうが、振り返ってみれば、それらの日々は、人生の大切な宝物として輝きを増していきます。教師人生を終えたとき、「充実した半生だった」と、自身に胸を張ることのできるようにしたいものです。そのためにも、今というときを大切にして、全力で子どもにぶつかってほしいと思います。 

(構成:林)
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