- 著者インタビュー
- 幼児教育
私たちの意識や行動は、殆どが他者との関わりを前提になされていますね。自我(ego)という私自身の主体的な心の働きは、他者からみられている自己(self)を意識し、その意識が発達することによって自己意識つまり自分自身を見つめる心も育くんでいきます。周囲の人々や他者との関わり方に関心を示して、この自己意識がグングン育つ時期ですので、自らの心とともに他者の心にも心を配ることができるように配慮することがとても大切であると思います。
このような自己意識の発達を丁寧に配慮して環境調整していくと、“他者”への思いとともに、様々な“他者”で構成されている”集団”への思いを深め、高めることができます。心ゆくまでみんなとともに生活、遊びを体験する機会を求めることが多くなりますので、それをサポートし、私の大切さ、〇〇ちゃんの大切さ、クラスの大切さを学んで行けるとよいと思います。一見、集団になじみにくい子どもであっても、他者や集団への関心は高まっていますので、その心の働きを尊ぶようにしたいものです。
このシリーズを通して、どのような保育力がアップするのでしょうか。それは、決してQ&A的にノウハウが向上するだけではなく、つまりHOW(どうしたらよいか?)ではなく、本質的な保育の質としてのWHY(どうしてそれが大事なのか)を大切にする力を身につけていくことに役立つのではないかと考えています。保育者が”育てよう”とする心のみに傾かず、子どもの”育とう”とする心を尊重し、寄り添い、子どもを信じ、見守り、ここぞと言うときにしっかりと関わる力、そういう保育力が身につくことを期待しています。
保育の専門性において重要なことは、その子どもが成長すること、自己実現することを手助けするということです。日々の保育においては、自然の欲求のママに生きようとする子どもと、社会が要求するルールや価値観などを伝える保育者との間にはズレが生じます。このズレをどのように捉え、解消しようとするのかということがそのまま保育内容になります。そのズレに折り合いをつけた保育のヒントになることが本書に書き込まれています。
自らの保育実践を意識的に行うこと、それを保護者や社会に向けて表現していくことが保育の専門性が評価されることにつながり、保育という仕事にさらに誇りが持てるようになると思います。
2歳児は「テリブル・ツー」と言われるほど、難しい時代と言われます。このテリブルな状況を、子どもの気持ちに添ってみていくと、それまでと違ったけなげな世界が見えてくるはずです。芽生え始めた私(という感情)が、自らの力で何とかしようとするのが2歳児です。それを見守っていると、全神経と持っている力を全部使って試行錯誤していることが理解できます。なんと美しく人間らしい姿かと感動すら覚えます(結果は無残で癇癪を起したりしますが、その失敗を繰り返してできるようになるのだと思います)。時間をたっぷりととって、子どもとともにその世界を実感してみませんか。保育(生きること)が楽しく豊かになるはずです。