著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
叱らずに子どもを育てませんか?
子どもコーチクラブ代表原 潤一郎
2017/3/1 掲載
今回は庄子寛之先生・原潤一郎先生に、新刊『教師のための叱らない技術 コーチングを生かして子どもを育てる』について伺いました。

原 潤一郎はら じゅんいちろう

子どもコーチクラブ代表。世界で初めて小学生がコーチングを学べる教室を立ち上げる。「子どもたちのいじめ・自殺ゼロ」を掲げ、5年で1000人以上の小学生の夢発見や悩み解決をサポート。小・中学校での授業や先生・PTA向けのコミュニケーションのセミナーは感動も即効性もあると好評を博す。

庄子 寛之しょうじ ひろゆき

東京都公立学校主任教諭。教師道場「道徳」リーダー。文部科学省がん教育教材作成ワーキンググループ委員。平成30年度道徳教科書作成委員。東京学芸大学女子ラクロス部監督。元女子ラクロス21歳以下日本代表監督。さまざまな取り組みを行っている中、コーチングに出会い、学級経営に生かしている。

―本書のタイトルは、『教師のための叱らない技術』です。「叱り方」に関する書籍は数多くあると思うのですが、本書が提案する『叱らない技術』とはどのようなものでしょうか。

 :明確にお伝えしたいのは、本書は「叱る」ということを否定しているわけではない!ということ。
 「叱る」ということは、目的ではなく手段の一つだということです。大切なのは、「何のために叱ろうと思ったのか?」「どう伝えることがその子の心に届くのか?」という目的やその想いを私たちが忘れないことだと思っています。
 私たち大人の本当に伝えたいメッセージを、「どのようにして子どもたちに、『伝わる』ように『伝える』とよいか?」そのための一つのご提案です。

―第1章と第2章では、コーチング理論とコーチングにおける叱り方(叱らない技術)について書かれています。そもそもコーチングとは、どのような考え方なのか、あらためて教えていただけますでしょうか。

 :コーチングとは自立を促すための対話技法の一つです。タクシーに乗ると、「○○の場所まで、○○のルートでお願いします!」というように、行きたい場所(目的地)や行き方は一人ひとり異なります。どこに行きたいかは、引き出していく必要があります。コーチングも同様に「その子は本当はどうしたいのか?」を発見し、「そのためにどのルートがよいか?」実現方法を考え、「進みにくくなった」ときに解決をサポートする手法です。プロの相談相手というのがコーチです。

―第4章と第5章では、日常場面や授業中の叱りたい場面で、どう叱らずに声かけをするのかという具体例を示していただいています。どの場面も、思わず叱りたくなると思うのですが、なぜ叱らないのでしょうか。また、どんな言葉かけが有効なのでしょうか。

 庄子:叱るということは、教師の主観です。それをしてしまう児童にも、さまざまな理由があるのだと思います。「しっかり考えているから友達と話していた」「授業のことを考えて絵をかいていた」「いつもよりとてもがんばっていたのに」「何度も直そうとしているけれど、直らない」「ちょっとぼーっとしていただけ」
 こんなとき叱ることは、子どもの成長を妨げ、かつよい学級づくりにもつながらないと思っています。叱りたい気持ちの裏に何があるのか考え、それを伝える。例えば、将来が心配だから叱っているとしたら「君のこんなことが心配なんだ」と叱らずに伝える。その行為を繰り返すことが大切だと思っています。

―本書を通して、コーチングの力は大きいと感じました。ところで、コーチングの力を実感するときはどんなときか、教えていただけますか。

 庄子:予想以上の答えを聞けたときですかね。コーチングは基本、こちらの考えを押し付けるのではなく、相手から引き出す手法です。こっちが予想をしていないような答えがどんどん出てきます。子どもと話をすると、子ども自身が答えを見つけるので、子どもの自己肯定感が上がります。それが一人ではなく学級全体になれば、おもしろい化学反応を起こしていきます。毎日見ているからわかる喜びですね。

―最後に、読者にメッセージをお願いします。

 庄子:まえがきに書いた通りですが、叱ることを悪いとは思っていません。私も一日一回は叱っています(笑)。でも、確実に叱る回数は減りました。先生方もぜひ数えてみてください。10回は軽く叱っています。ノートに記入していくと、自分が叱る傾向がわかります。それが少しでも改善できたら、きっとクラスは劇的に変わります。そんなきっかけの本にしていただいたらうれしいです。教師のための本ですが、コーチングに興味のある方や、今はやりの「アドラー心理学」を学びたい方にもぜひ読んでほしい本になっています。よろしくお願いします。

 :学校の中で。お子さんとの対話の中で。スポーツ指導や塾の中で。様々な場面で本書が力になることを願っています。
 子どもと接するときに、一人で悩んだり、抱え込んだりしてしまうこともあるかもしれません。だからこそ、この本には、読んだだけで元気になれるメッセージをたくさん盛り込みました。子どもたちの未来は無限大。その一方で子どもと接するのは責任やプレッシャーもかかってきます。どうか忘れないでくださいね。私たちは大切な子どもたちと関わるあなたの味方ですから!

(構成:茅野)
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