- 著者インタビュー
- 算数・数学
私たちは「協調学習(Collaborative Learning)」を、一人ひとりが自分で考えて答えをつくりながら、他者とのやりとりを通じて自分が表現できる答えの質を上げていくような学び一般のことを指す言葉として使っています。
他方、「知識構成型ジグソー法」というのはこの「協調学習」を教室で引き起こすための授業手法のひとつです。「一人では十分な答えが出ない問い」に対して、明示的に違う考えをもった仲間との対話を通じて問題解決を図ることで、一人ひとりの理解の深まりをねらいます。
第1章では、次期学習指導要領における「アクティブ・ラーニング」の位置づけを整理し、本書で扱う「知識構成型ジグソー法」をどのように活用できるとよいかの指針を示しています。第2章では、「知識構成型ジグソー法」の授業の流れとその意味を解説しています。第3章では、6つの事例から、数学における「知識構成型ジグソー法」の授業デザインのポイントと生徒にどのような学びが起こってほしいのかのイメージを提示しています。第4章では、授業づくりにあたって先生方がよく疑問に思われる事柄についてのお答えをまとめています。
出発点は、一人ひとりが主体的に答えのつくり手になることを保障してあげることだと思います。教室やグループでの問題解決学習の場合、ともすれば受け身に回って正解を教えてもらうことを待つ生徒が出てきてしまいます。一人ひとりが自分で答えをつくるんだということ、一人ひとりの違った考え(間違いや「分からない」というこだわりも含めて)を出し合えることを、授業のデザインでいかに支えてあげるかという視点が大事になってくると思います。
本時の取り組む問いが、本時の生徒たちにとってちょうど取り組みがいのある問いになっているかどうかが一番気をつけるべき点かと思います。メインで解決する問いが最初から一人で解けてしまうようなものであれば対話は必要ないですし、逆に問いの手がかり(この手法で言う「エキスパート活動」)すらその生徒にとって難しすぎるものであったら理解が先に進みません。本時の生徒たちにとってちょうど取り組みがいのある問いを設定するために、普段から生徒たちが何をどのくらい理解していそうか、どこでつまずいていそうかをよく観察しておけるとよいでしょう。
「主体的・対話的で深い学び」の実現は、私たちにとって想像以上に挑戦しがいのある課題であるように思います。と同時に、生徒のこれまで見えなかった可能性をたくさん見せてくれる希望でもあります。
「知識構成型ジグソー法」はその実現のための唯一解ではないですが、ひとつの手法に腰を据えて全国の仲間と考えを出し合うことで、「主体的・対話的で深い学び」を実現するための知恵を集めていくことはできるのではないか、と思っています。「知識構成型ジグソー法」というツールをそんな風に使っていただく入り口として、本書をお手にとっていただけましたら幸いです。