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本書は「探求的思考力」という言葉を軸に、学習課題の設定方法を提示しています。第1章は、理論編です。まず、従来の「探究」に関する理論研究、実践研究を整理し、本書が示す「探求的思考力」の定義を説明しています。そのうえで、15のストラテジーに基づく学習課題のデザインを、授業例とともに提示しています。第2章は、実践編です。具体的な授業、単元を事例として、学習課題の提示から生徒が結論を導くまでの様子を示しています。
授業づくりの段階で、生徒の探求過程を構造図のように示すことが大切です。私は、学習課題を作成する前に、授業、単元を終えた時点で、生徒にどのような力が身に付いていればよいのか、生徒がどのようなことを考えられればよいのか、その姿を具体的に想定しています。そして、そのような姿になるまでに、どのような思考過程、探求過程があるのかを考えていきます。そのうえで、どのような学習課題を設定すればよいのかを考えています。
大学院在籍中から、全国各地の公開授業などを参観し、数多くの授業記録を作成してきました。その中で、授業を貫く問いに基づく探求過程の重要性に気付きました。同時に、様々な研究論文や先行実践を収集し、優れた実践から示唆を得てきました。結論として、学習課題がシンプルな方が、生徒の思考が開かれ、考える力が養われるのではないかと考えました。また、シンプルな問いこそ、思わずハッと考えさせることができると確信しました。
先ほどの質問とも関連しますが、学習課題が複雑な方が、むしろ生徒の答えが限定され、結論が単純なものになってしまいます。また、複雑な学習課題では、理解できている生徒とそうでない生徒の間で学習に差ができてしまい、主体性も対話的な学びも実現することができません。そのため、どのような生徒も考えることができ、対話することによってお互いの考えが深まるような学習課題を設定することが、実現させるための工夫だと考えます。
学習課題は、授業の導入で提示するだけでは成立しません。課題に取り組む切実性をもたせる、導入の工夫が大切です。学習課題によって、生徒の反応は大きく異なります。また、同じ学習課題を提示しても、生徒の実態や教師が意図する展開によって、まったく違った授業展開になります。本書をきっかけに、様々な学習課題を生徒に提示していただければ幸いです。各学校で、生徒がどのような姿を見せてくれるか、とても楽しみにしています。