著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
即実践できる!高校理科のアクティブ・ラーニング
共栄大学教育学部教授和井田 節子ほか
2017/7/21 掲載
今回は和井田節子先生と長野修先生に、新刊『アクティブ・ラーニングを位置づけた高校理科の授業プラン』について伺いました。

和井田 節子わいだ せつこ

共栄大学教育学部(教授)
「学びの共同体」高等学校部会事務局長
主な著書に
『「学びの共同体」の実践 学びが開く!高校の授業』(明治図書、2015年、編著)、
『「学びの共同体」で変わる!高校の授業』(明治図書、2013年、編著)、
『協同の学びをつくる:幼児教育から大学まで』(三恵社、2012年、編著)など多数。

長野 修ながの おさむ

静岡県立伊豆中央高等学校(非常勤講師)
静岡県立沼津城北高等学校で「学びの共同体」による協同学習を中心にした授業を始め、現在に至る。
科目は主に物理を担当。

―「アクティブ・ラーニング」とは何でしょうか。本書でのとらえをどうぞ教えてください。

 「アクティブ・ラーニング」とは、一方的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、能動的な学習を示す言葉です。本書ではさらに、授業の中で他者の持つ多様性に触れ、話す・書く・発表する等によって自分の考えを表現し、探究的に学ぶ活動を通して学習内容への理解を能動的・主体的に深めることを目的にした学習を指しています。また、これらの活動によって、論理的思考力やコミュニケーション力等のスキルを身につけることも期待されています。(和井田)

―高校の授業でアクティブ・ラーニングを取り入れた時、生徒はどのような様子でしょうか。

 アクティブ・ラーニングというと、にぎやかで活発な意見交換がされる授業を思い浮かべるかも知れません。しかし、アクティブ・ラーニングが浸透すると、とても穏やかできめの細やかな雰囲気が醸し出されます。むしろ生徒の声のトーンは下がります。それは、生徒が安心して深い学びに入っているからです。
 もちろん、授業中に寝たりする生徒は激減します。また、わからないこと・疑問に思うことを素直に尋ねるようになりますし、他の生徒の発見や気づきを通して、「あっそうか」体験が増えます。(長野)

―本書は具体的な授業プランが物理、化学、生物、地学と各分野掲載されていますが、例えばどんな事例が紹介されているのでしょうか?

 校種も課程も異なる、学校の状況も生徒の実態も違う、様々な学校での多彩な実践が掲載されています。ですから、実験一つとっても、体を使った大がかりなもの(エネルギー)、予想を立てて実験で検証するもの(落下運動・浮力)、量的関係を体験するもの(気体の発生)など、バリエーションに富んでいます
 また、発問に工夫を凝らし生徒の学びを深めているもの(タンパク質の合成)もあり、授業改善のヒントがあります。さらに、フィールドワークを通した生徒の生き生きとした学びも掲載されています。(長野)

―3章は評価についてまとめられていますが、アクティブ・ラーニングを位置づけけた授業で留意すべき点はどのようなことでしょうか。

 第一は評価の観点です。それらは、授業目標と対応していることが大事になります。理解の深化だけでなく、能動的・主体的で探究的な学びの姿勢、複数の考えを聞き、検討する思考力や判断力や表現力等の多くの観点が考えられます。第二は、評価方法です。客観テストだけでなく、観点に応じた多様な評価方法を工夫することが必要になります。第三は、評価の活用です。生徒が自己の学びの状況を理解するとともに、教師もカリキュラムや授業の改善につなぐことが大切になります。(和井田)

―最後に、高校で理科授業に力を注がれている先生方にメッセ―ジをお願いいたします。

 アクティブ・ラーニングは、21世紀の社会を生きる上で不可欠な力を育てる学びです。仲間と学びを深め合い、探究の楽しさに触れることができた生徒たちは幸せです。そのような理科の授業がよりよい未来を支えていくと私は強く思うのです。(和井田)

 「考えさせようとしても、生徒はやらない」などと挫けそうになることもあります。しかし、理科はもともとアクティブ・ラーニングと相性がよく、授業改善の工夫や仕掛けを盛り込みやすい教科です。生徒の「学び」を中心に据えた理科教育をともに進めましょう。(長野)

(構成:佐藤)
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