
- 著者インタビュー
- 理科
文部科学省が国語と算数の悉皆調査をしてから、全国の理科の研究校が、次々と国語や算数へと研究を変えてしまいました。もう理科を研究しているどころではないと言わんばかりです。
しかし、道具教科と言われる国語や算数で身につけた基礎・基本は、他教科で活用させてこそ、生きて働く力として身につくものであることは間違いありません。その意味で、「授業研究」の中の「38 国語科と連携した理科授業」「39 算数科と連携した理科授業」は、汎用的な「資質・能力」育成のための一つの方法です。
それぞれの教科の本質は、他教科との比較、連携によって浮き彫りになってきます。ぜひ、理科教育での活用にチャレンジしてみてください。
ここで紹介したすべての実践は、「資質・能力」育成を目指して考えた授業ではありません。中には、10年以上前の実践もあります。
というのは、理科の「問題解決的な学習」は、指導内容や教材が変わることはあっても、その本質に変化はないからです。示された「見方・考え方」についても、何ら目新しいものはなく、「問題解決的な学習」が新たな視点から整理されたに過ぎません。
その背景には、「問題解決的な学習」の形骸化があります。今の授業が、子どもが本当に主体的になっているのか、子ども自らが本当に対話を欲しているのかの吟味が必要です。その事実が実現すれば、深い学びによって「資質・能力」が育つことは、当然のことと言えるでしょう。
ある刑事ドラマで、主人公が言いました。
「事件は会議室で起こっているんじゃない。現場で起こっているんだ」
これは、教育もまた同じです。教育は子どもと教師が直接接する教育現場で起こっているものであり、文部科学省でもなければ、教育委員会でもありません。
今回の学習指導要領の改定による授業改善が、日本すべての地域、すべての学校、すべての教師たち、そしてすべての子どもたちのために必要であるとは思えません。何を選んで何を捨てるか…その判断は、私たち教師一人ひとりに委ねられているのです。
そういった教師の主体性、気概こそが、これから求められると思っています。
本書の執筆をしながら、私がどうして教師をこれまで続けてこられたのかを考えてみました。その答えは明白でした。教師としての自分を幸せにしてくれた様々な人との出会いでした。
ある教師が言いました。
「最初にどの学校に赴任するか、それで教師人生の70が決まる」
確かに、昔はそう言えたかもしれません。しかし、今は情報化社会です。優れた教師との出会いのチャンスは、ネット上でも見つけることができます。
身銭を切って、勇気を出して、様々な研修会に参加してみましょう。自分にとって必要な知識が得られることはもちろんですが、様々な人との出会いが、教師を続けるエネルギーとなるはずです。