- 著者インタビュー
- 道徳
前著が全体像を俯瞰的に捉える内容とすれば、本書はそのひとつひとつの内容をさらに具体的に詳しく書いたものです。読者の皆様のリクエストを受け、基本的なものは押さえつつ、発問と板書に特化してあります。
授業は、何と言っても発問が命です。同じ教材でも発問が違えば展開は全く変わります。子どもたちがはっとして、改めて考え直す作業を始めるためには、「知っているつもり」の概念崩しをしてやる必要があります。そのための発問ですから、私自身が常に既成事項に対して、よい意味でのクリティカルシンキングを行っています。「それって本当なのかな」「全く違う考え方もできそうだぞ」と、哲学すると言ってもよいでしょう。
ズバリ、図式化することです。図式化することによって、前後のつながりや全体像が見えてきます。それを行うことで、教材解釈も進みますし、展開も見えてきます。
後は、本質論で考えるということです。教材の中に書かれている行為行動と、それを生む心とを結びつけていきます。行為行動を生む心は教材に書いていないので、板書を通して子どもたちと一緒に見つけていくという作業を行います。
これは文部科学省も言っていますが、「〜ねばならない」としないことでしょう。教科書を使わなければいけない、評価をしなければならない、という発想ではなく、子どもたちのよりよい道徳性の育成のためにできることは何かを最優先にして、教科書や評価をどのように活用するかを考えていきましょう。目の前の子どもたちに応じた、弾力性のある授業を目指しましょう。決して、評価のための評価にならないように。
教師に向かって「正答」を答えるような授業をしていては、「主体的に学ぶ・対話的に学ぶ・深く学ぶ」ための必要な能力は育ちません。大切なことは、「学ぶ」こと「育つ」こと「生きる」ことなどについて、教師がしっかりとした哲学をもつことです。教師がそれらについての自信をもつことによって、他者と共に未来の社会を創造していくことのできる、いわば「生きる力」のある人間を育てることができるのです。本書を教師が自らの哲学を形成するための糧としてください。