
- 著者インタビュー
- 学級経営
学級経営がかつてに比べて難しくなったと言われます。若い先生方だけでなく、中堅・ベテランの先生方もめまぐるしく変化していく時代に、そして教育改革や世論の動向に右往左往させられている……そんな印象があります。言い換えれば、学級担任が変化する生徒、保護者、地域や行政に翻弄されて、本当は一番大切なはずの自分のなかの「学級経営の軸」みたいなものをもてなくなってきていることが要因のように思われます。そうした意味で本書は「軸をもとう!」というメッセージを投げかけています。
学級経営、学級づくりの本はたくさん出ていますし、ネットを開けばさまざまな主張が展開されてもいます。でもその多くは「こうすればこうなった」式の教育技術の指南書であったり、「僕はこう思う」という狭く現実的でない理念の披瀝であったり、いずれにしても学校教育全体を俯瞰して語るものではないように思います。
そこで私たちは、一度「学級経営を俯瞰して見てみよう」と考え、教師が前面に出るべき指導と後退して支えるべき指導(=さきがけ的指導・しんがり的指導)、生徒たちに着火するタイプの指導と鎮火するタイプの指導(=アクセル的指導・ブレーキ的指導)という四つの視点があることを見つけました。どうも多くの教師たちはこれらを分けることなく、無意識のうちに指導しているな……と。これらを意識しながら学級づくりに臨むだけで、「自分がいま何をしているのか」がずいぶんと具体的に見えてくるなと考えたわけです。そしてすべての学級活動をこの視点で見直してみたわけですね。本書はそれをまとめ、提案したものです。
書名にもなっているので言いづらい部分はありますが、本音で言えば、学級づくりには「失敗」はあっても「成功」はないんだろうと思います。どんなに「成功した」と思っても上には上がありますし、自分のできることを精一杯やったということはあり得ても、自分のできることは完璧にやり遂げたということはあり得ません。たぶん、「成功」っていうのはほんとうは自分ではなく、他人が評価するものなのでしょう。それでも、自分自身、「なんとか少しでも良くなるように」と努力し続ける、いまやっていること、いま起こっていることを一つ一つ分析しながら、一つ一つ踏み固めていく、そんなサイクルのなかで「ちょっとだけ良くなってきている」と実感できる、そんなベクトルのなかにいられたら、きっと「成功」なのではないかと感じています。
行事には「いいものをつくる」というベクトルと「子どもたちを育てる」というベクトルとの二つがあります。子どもたちが育ちながら結果的に良いものができれば一番いいわけですけれども、なかなかそうはいきません。生徒たちに任せればなかなか良い結果に結びつかないことが多いですし、教師主導なら綺麗なものはできますが生徒が育ちません。特別活動の時間や放課後の時間などが削られるなかで、なかなかこの両者を追うことができない。それが先生方の悩みの本質なのだと感じています。こういうことも、3年間を俯瞰して、「いま、この行事でやるべきことは何か」という視点で考えれば、その行事に取り組む自分なりの「軸」を意識したうえで取り組めるのではないでしょうか。
中学校も小学校に負けず劣らず、学級経営が困難になってきています。3年間を俯瞰しながら、同僚教師とのチーム力によって、学級経営の一つ一つの要素を具体的に踏み固めていく、そして生徒たちが少しでも自力で成長していけるように支えていく、本書がそんな教員生活の一助となればと考えています。