著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
体育授業づくりの秘訣はすべてここに!
天理大学体育学部体育学科教授木下光正
2019/3/15 掲載
今回は木下光正先生に新刊『小学校体育 指導スキル大全』について伺いました。

木下 光正きのした みつまさ

1955年 東京に生まれる
1977年 立教大学社会学部卒業
埼玉県志木市立志木第二小学校,志木市立宗岡第二小学校,志木市立志木第四小学校を経て,1994年より筑波大学附属小学校教諭。現在,天理大学体育学部体育学科教授。

―本書は『大全』と題していますが…どんな極意がギュッとつまっているのでしょうか?

「大全」が意味するとおり,体育に関する全てのスキルが網羅された内容になっています。具体的には,学習環境づくり,準備・片付けをスムーズにする工夫,体育で重要な仲間づくりの方略,子どもを肯定的に認める評価法,各領域でよく見かける支援が必要な子を伸ばす授業づくりのポイント,運動能力テストや運動会の運営まで含め,さまざまなスキルが,わかりやすく,コンパクトな形で漏れなく書かれています。「なるほどー!」「そうだねー!」と思っていただけること間違いなしです。

―木下先生は長年「体育の先生」をされてこられ,現在は「体育の先生」となるべき方を育てられていますが,体育の授業で大事にされていることや大切だと学生に伝えていることは何ですか?

 子どもが体育を好きになる一番のきっかけは,「できる」ことです。技能を保障するには,ステップを踏んだ指導と運動の頻度保障が必要となります。その際,教師が一方通行で教えるのではなく,運動観察場面を用意して知識を獲得させることが「わかる」楽しさにつながります。また,子ども同士の関係性がよいと運動が好きになるばかりでなく,上手になります。
 こうした「できる」「わかる」「かかわる」を授業で実現することが大切だと学生にも伝えています。

―運動が苦手な人代表としてうかがってしまいますが……体育の先生はみんな運動がお得意。なかなかできない逆上がりや二重とび,こわーいプールを克服させていただけるものでしょうか?

 体育学部の学生は自分ができるので,できることが当たり前だと思っています。ですから,できないで困っている子やできないで体育嫌いになってしまう子が数多くいることをいつも話しています。
 本書には,そうした「できない」で苦戦,苦労している子をどのように指導すればよいかという指導スキルが満載です。「なわとびで一跳躍二回旋になってしまう…」「逆上がりで体が反ってしまう…」「クロールのキックが…」等々,是非読んでみてください。きっと腑に落ちます。

―本書には71本のスキルが掲載されているとのことですが,その中からどうぞおすすめのスキルを1つ紹介ください。

 一番難しい質問をありがとうございます。
若い先生方にとってはどのスキルも「そうだなあ」と思っていただけるでしょう。ベテランの先生方には「こんな方法があったのかー」という場合もあるでしょう。
 「子ども同士の関係を上手くつくれない」「恥ずかしがって踊ってくれない」など,授業運営や授業方法で一番困っていることが,全て読者の先生方へのおすすめのスキルになると思います。

―最後にこの春から体育授業をがんばってみたい!と思われる先生に向けてエールのメッセージをお願いします。

 体育は技能の伸びや仲間同士のかかわり方など,子どもの「変化」「変容」が実感できる教科です。「あの子は上手になったなあ」「がんばって取り組んでいるなあ」「チームで仲良く活動して,メンバーが満足しているなあ」など,他の教科よりはっきり見とれます。また,子どもを掌握するマネジメント技術は,他の教科や宿泊学習などでも役立ちます。
 授業運営が上手くできたり,技能的指導方法を理解していたりすることが,子どもの変化を生み出す原動力になります。是非,ご自分の能力を向上させ,体育授業を通して子どもの変化を楽しんでください。本書は,その一助になると思います。

(構成:佐藤)

コメントの受付は終了しました。