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フィールドワーク型の学びとは、学習者中心の学びの姿を私なりに表現したものです。共通の学習目標に向かって、子どもたちが目標を達成するための見通しや方法を自分で選択・判断し、学習を調整します。教師の先導に子どもが従う「遠足型」とは、対称的な形です。教師の役割は、意欲の喚起やつまずきに対する支援が中心になります。子どもの自由度が高いからこそ、効果的な発問によって学びのフィールドに乗せることが大切です。
発問スキルを活用するポイントは、子どもが「見方・考え方」を働かせるように意識することです。「見方・考え方」の習得自体は学習の目標ではないため、子どもたちは「見方・考え方」を働かせることに無自覚になりがちです。発問を通して「見方・考え方」を働かせるように意図的に刺激することで、子どもたちが深く思考できるようになります。
発問の理論を学び、学習指導要領における「見方・考え方」の理念を学んだ上で、授業で試行錯誤してきました。その結果、発問の一字一句にまでこだわるようになりました。また、社会科固有の理論と、どの教科にも当てはまる理論を分けて考えることで、発問の精度が高まりました。それでもうまくいかないことがあるので、日々勉強です。
視覚的なイメージは、瞬間的かつ容易に理解できる良さがあるので大切です。ただし、図解は難解な概念を簡略化して表現するので、イメージが不適当だと思考の幅を狭めるおそれがあります。例えば、「多面的・多角的」の説明では、一般的には立方体の図を用います。しかし、私はもっと的確なイメージがあると考え、本書では別の形で図解しました。
子どもの問いが重視される時代だからこそ、教師の発問が大切です。子どもは、よい発問を受け続けることで、よりよい問いのもち方を学ぶからです。また、学習者中心の授業にシフトするためには、子どもが思考の技としての「見方・考え方」を磨く必要があります。未来に向けた社会科のあり方をデザインする上で、本書が少しでもお役に立てば幸いです。