- 著者インタビュー
- 授業全般
誰だって何事にも慣れないうちは大変です。ICTに抵抗感が強い先生方なら尚更だと思います。
だからといって、ICTの活用は主体的・対話的で深い学びを実現するための授業づくりと決して無縁ではありません。避けて通るわけにはいかないのです。そうであればやはり教師として何とか克服しなければならないものになります。
教師としては「前向きに端末を使ってみよう」「子どもとともに使ってみたい」という意識だけは持ち続けることです。苦手は苦手でいいのです。周りにいる同僚の先生方とともに悩みを共有し合いながら一歩一歩できることを増やしていきましょう。
子どもからも学ぶ姿勢をもつことも大切です。子どもは物心ついた時からタブレットなどのICT機器は目にしており、大人よりも抵抗感は少なく、失敗を恐れず操作します。
また、ICT機器に強い人が職場内にいれば超ラッキーです。きっと頼りになるアドバイザーになってくれるはずです。先生方各自がICT技能を高めていくには、職場内での学びを深めるのが一番のようです。
1997年のアップルコンピュータの広告に「Think different」というスローガンが書かれていました。
「発想の転換」、「固定概念にとらわれない新しいとらえ方でコンピュータを使う」という言葉に心躍った思い出があります。
まさに今教師に求められているのは、この新しいとらえ方でタブレット端末を使っていくことだと思っています。
Q&Aのコーナーでは、利用制限や禁止事項など心配なところにどうしても目がいってしまいます。
しかし、新しい発想を生み出すためにはたくさん使ってみる、楽しく使ってみる、試行錯誤してみることに目を向けてスタートしてほしいと思います。
熊本市ではタブレット端末の機能がフルに発揮できるように、学校現場での制限をできるだけなくしてあります。そのような利点を活かし、教師がタブレット端末を使って上手に「教える」授業から、子どもたちがタブレット端末を使って楽しく「学ぶ」授業に変えていくときに、私たち教師が思いつかない新しい発想が生まれるのではないかと期待しています。
本書では、ICT活用に関する5つの機能を次のようにまとめています。
- 協働的な学習をより容易にできるようにする「配信・共有」
- 一瞬の動きや細部が記録できるようになり、記録の蓄積が容易にできるようになる「撮影・記録」
- データを整理して見やすく表示したり、シンキングツールで自分の考えを整理して視覚的に表現したりする「可視化」
- 紙に書いたり実際に作ったりという表現以外に、プレゼンを作ったり動画・写真を加工したり音楽アプリで曲を作ったりと表現の幅を広げることができる「創造」
- 学習に必要なものを子どもたち自身が書いたり切ったりして準備する必要がなく、その学習で実際にやらなければならないことの時間を大幅に確保することができるようになる「操作・体験」
これらの5つの機能を意識し、それぞれを組み合わせてGIGAスクール時代の授業をデザインしていくことで上手にICTを活用することができると思います。
自転車に上手に乗れるようになるまでに、誰かに支えてもらわなかった人、転ばなかった人はいないと思います。目線や姿勢など乗り方のコツを教えてもらい、失敗を繰り返しながら、少しずつ上手になっていったのではないでしょうか。
ICT活用も同じだと思います。失敗を恐れてやろうとしなければ、いつまでたっても使えるようにはなりません。教えてもらったり、周囲に支えてもらったりしながら、まずは簡単なことからで始めてみましょう。
この本に実践を寄せてくださった先生方の中には、ICTが苦手だった先生方も多くいらっしゃいます。そんな先生方が、たくさんの挑戦を繰り返しながら、手応えを感じた実践がこの本には掲載されています。きっとこれからICT活用を始めてみようという先生方の一助となるはずです。